マルクス入門と資本主義の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アイデアや才能が育ちやすい環境を整備する方法は二つある
マルクス入門と資本主義の未来(8)【深掘り編】付加価値を高めるために
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
労働者が自分の付加価値を高めるために取るべき手段の第一は「教育」である。対して、企業はアイデアと技術力によって新たな需要をつくっていくことで、付加価値を高める必要がある。そのためには、エンジェルタイプの投資、もしくは中国型の国家的な投資が必要だが、日本はどちらの道も取っていない。逆算の視点を持って、すぐには利益が出ないがとても重要である「基礎研究」に投資することが求められている。講義後の質疑応答編第2話。(全10話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分57秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2021年2月11日
≪全文≫

●労働者の付加価値を高める第一の手段は教育


―― 企業としてどのように価値をつくっていくのかという際に重要なのは、新しいサービスや製品を作っていくことが価値創造であり、それが需要を生み出せば利益が出るということかと思います。反面、先ほど先生が指摘された、グローバル化の状況下では同じ努力をしても、新興国の企業に負けてしまうので、それを避けるために海外に工場が流出してしまうという流れがあります。このような状況は、先進国である日本の労働者からすると、厳しい側面だと思います。こうしたことに関して、企業と労働者の考え方としてどのように整理すれば良いでしょうか。

橋爪 労働者の戦略としては、労働力の付加価値である限界生産性を高めていくことが挙げられます。その第一の方法は教育です。したがって、教育に投資することは非常に重要です。しかし、教育もビジネスなので、皆が同じように考えるようになると、教育費用がどんどん高くなっている傾向にあります。

―― 現在、日本の教育費用も非常に高くなってきていますね。

橋爪 日本はアメリカに比べるとまだ大したことはありません。

―― アメリカは確かにそうですね(笑)。

橋爪 話を戻すと、教育投資の費用対効果は、教育費があまりに上がってしまうと、それに見合わなくなってしまいます。日本でも、「大卒あぶれ」のような現象が起きているので、見合わなくなってきた側面もありますが、それでも個人的には日本ではまだ教育投資のリターンを十分に得られる教育費用水準にあると思います。

 しかし、アメリカのようにほとんどの人が教育投資を目論む国では、見合わない水準で均衡してしまいます。とはいえ、教育投資を諦めてしまうと、人生をはい上がるのはなかなか難しいのも現状です。いずれにしても、教育が一つの方法としてあります。


●企業の付加価値はアイデアと技術力によって決まる


橋爪 企業の方で付加価値をつける方法に関してですが、価値の本質は『資本論』の記述からはなかなか理解できません。『資本論』の世界では生活必需物資を生産していて、需要と供給は一定と仮定しています。しかし、近代経済学の世界では、需要と供給は変化します。需要の背景にあるのは、ある商品を欲しいと思う度合いを表す効用関数です。人々が何を欲しているのか事前に分からないという事実が、経済における非常に重要な...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ