マルクス入門と資本主義の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
現在のグローバル経済をマルクス主義で見てみると?
マルクス入門と資本主義の未来(7)【深掘り編】現代における労働価値説の捉え方
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
グローバル化の進展は、『資本論』の中では予見されていなかった。世界経済は一体化し、富の平準化の傾向が見られる一方、政府は互いに対立するという現代の状況を、適切に記述する政治経済モデルの誕生が求められる。また、金融資本の比重が世界全体で大きくなってきているが、労働から価値が生まれるという労働価値説の意味が完全に失われたわけではない。講義後の質疑応答編第1話。(全10話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分10秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2021年2月4日
≪全文≫

●グローバル化が進展する中で新たな視点が必要


―― 橋爪先生、ありがとうございました。非常に分かりやすい講義で、マルクス主義が何を説いたか、それに対して近代経済学がどのように応答したか、現状がどのように変化しつつあるかなどの点に対して理解が深まりました。いくつか質問させていただいてよろしいでしょうか。

橋爪 どうぞ。

―― 講義の最後で、現在の状況はマルクス主義が予言した状況と似てはいるが、異なるものだというご指摘がありました。その異なる部分とは、その前にご指摘された近代経済学の分析にいえば、どのような部分なのでしょうか。

橋爪 マルクスは全ての状況を考慮したわけではなく、単純なモデルをつくって説明するということに力点を置きました。したがって一国モデルなのです。

 それに対して、グローバリズムは多国モデルではないですか。資源の分布にばらつきがあり、資本や技術の蓄積にばらつきがあり、労働者の教育や生活水準にばらつきがあります。すると、技術や資本を移転することで、発展途上国や新興工業国でも、先進国と同じ品質のものを生産することが可能です。このような条件下では、安い賃金で労働者を雇用できる場所に、資本が移動していきます。これが、中国が世界の工場たる所以なのです。

 その結果、先進国で賃金が下がり、途上国の賃金が上がります。そのため、途上国に中産階級が現れるのです。このような状況は、『資本論』では言及されていませんが、近代経済学ではグローバルモデルで考えれば、当然の状況です。それが良いことか悪いことかについて考えてみると、先進国の生活水準が今までのように順調に上がっていくわけではないというのは困った点ですが、人類総体としてみると、資本、富、就業チャンスなどの適正な再配分に向かって進んでいるので、いわば必要なコストとも考えられるのです。

―― はい。

橋爪 ただ、経済は一体化していますが、政府はバラバラです。先進国の政府の中には、怒った労働者に対して一国中心主義などを打ち出して、支持を受けてリーダーになる者も現れます。一方、途上国では、中産階級が増えるので、誰もが満足するようになるのはいいのですが、先進国にいじめられることがあります。すると、怒れるナショナリズムが高揚し、国際秩序を批判する、領土意識を高めるなどの反応が現れます。場合によっては、軍事衝突な...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…大大名たちを魅了した秀長の器量とは?
黒田基樹
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎