マルクス入門と資本主義の未来
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現在のグローバル経済をマルクス主義で見てみると?
マルクス入門と資本主義の未来(7)【深掘り編】現代における労働価値説の捉え方
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
グローバル化の進展は、『資本論』の中では予見されていなかった。世界経済は一体化し、富の平準化の傾向が見られる一方、政府は互いに対立するという現代の状況を、適切に記述する政治経済モデルの誕生が求められる。また、金融資本の比重が世界全体で大きくなってきているが、労働から価値が生まれるという労働価値説の意味が完全に失われたわけではない。講義後の質疑応答編第1話。(全10話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分10秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2021年2月4日
≪全文≫

●グローバル化が進展する中で新たな視点が必要


―― 橋爪先生、ありがとうございました。非常に分かりやすい講義で、マルクス主義が何を説いたか、それに対して近代経済学がどのように応答したか、現状がどのように変化しつつあるかなどの点に対して理解が深まりました。いくつか質問させていただいてよろしいでしょうか。

橋爪 どうぞ。

―― 講義の最後で、現在の状況はマルクス主義が予言した状況と似てはいるが、異なるものだというご指摘がありました。その異なる部分とは、その前にご指摘された近代経済学の分析にいえば、どのような部分なのでしょうか。

橋爪 マルクスは全ての状況を考慮したわけではなく、単純なモデルをつくって説明するということに力点を置きました。したがって一国モデルなのです。

 それに対して、グローバリズムは多国モデルではないですか。資源の分布にばらつきがあり、資本や技術の蓄積にばらつきがあり、労働者の教育や生活水準にばらつきがあります。すると、技術や資本を移転することで、発展途上国や新興工業国でも、先進国と同じ品質のものを生産することが可能です。このような条件下では、安い賃金で労働者を雇用できる場所に、資本が移動していきます。これが、中国が世界の工場たる所以なのです。

 その結果、先進国で賃金が下がり、途上国の賃金が上がります。そのため、途上国に中産階級が現れるのです。このような状況は、『資本論』では言及されていませんが、近代経済学ではグローバルモデルで考えれば、当然の状況です。それが良いことか悪いことかについて考えてみると、先進国の生活水準が今までのように順調に上がっていくわけではないというのは困った点ですが、人類総体としてみると、資本、富、就業チャンスなどの適正な再配分に向かって進んでいるので、いわば必要なコストとも考えられるのです。

―― はい。

橋爪 ただ、経済は一体化していますが、政府はバラバラです。先進国の政府の中には、怒った労働者に対して一国中心主義などを打ち出して、支持を受けてリーダーになる者も現れます。一方、途上国では、中産階級が増えるので、誰もが満足するようになるのはいいのですが、先進国にいじめられることがあります。すると、怒れるナショナリズムが高揚し、国際秩序を批判する、領土意識を高めるなどの反応が現れます。場合によっては、軍事衝突な...

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