マルクス入門と資本主義の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜマルクスの予言は失敗だったか…『資本論』の問題点
マルクス入門と資本主義の未来(5)『資本論』の弱点
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
マルクスの描いた未来予想図は当時の人々に衝撃を与えたが、その後、彼の予言通りにはなっていない。その現象的な理由としては、マルクスが言及しなかった「中産階級の出現」が挙げられる。こうした問題が生じたのは、マルクスの議論がスケールメリットや副産物の存在を無視した非常に単純化した理論だったためである。(全10話中第5話)
時間:11分14秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2021年1月21日
≪全文≫

●共産主義の世界的な伝播の脅威


 それでは、最後となる第五回の講義を始めます(編注:2回に分けてお伝えします)。マルクスの仕事、特に『資本論』について、そして共産党についてお話ししてきましたが、マルクス主義のその後の展開について考えてみようと思います。

 今から100年以上前にロシア革命が起きた後、世界中は大騒ぎとなりました。このまま世界中がマルクス主義、共産主義の社会になるのではないか、と多くの人が心配していました。特に資本家や現体制を維持している人々は動揺します。ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなど各国にそうした動揺は波及していきました。

 イギリスとアメリカはアングロサクソンの人々です。どういうわけか、アングロサクソンの人々は、マルクス主義の影響をあまり受けませんでした。対して、フランスやドイツではマルクス主義の影響は大きかったのです。イギリスやアメリカも、自国以外の国々が共産主義化することを憂慮しました。

 日本や中国でも、それなりに共産主義の力が強くなり、動揺が起こりました。日本では知識人には大きな衝撃を与えましたが、現実的な運動としてはそれほど盛り上がりませんでした。中国では、知識人に大きく影響を与えただけではなく、現実の政治・社会運動として大きな力を持ち、国民党に打ち勝って中華人民共和国を建設しました。このように中国では共産主義が世界史の流れを大きく変えて、共産主義への懸念は現実のものとなりました。それ以外の国々でも、共産主義は大きな力を持ちました。


●中産階級の出現でマルクスの予言通りにはいかなかった


 総じていうと、世界が共産主義の波に飲み込まれるということは起こりませんでした。さまざまな理由がありますが、現象的にいえば、マルクスが予言したように、労働者の運命が悪化の一途をたどるということはありませんでした。中産階級が出現したためです。

 マルクスの予言によれば、プロレタリアートは生存水準かそれ以下の生活しか送れないようになるため、革命のみが希望となり、共産党に集結するとされていました。対して、中産階級には余裕があります。例えば、「自分が中卒だったから、子どもには高校や大学に行かせよう」とか、「借家ではなくて一戸建ての家に住もう」とか、「休みには旅行に出かけよう」など、全体的に余裕を持っています。余裕があるということは、失わ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏