マルクス入門と資本主義の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マルクスの『資本論』をなぜ今、読み返すべきなのか
マルクス入門と資本主義の未来(6)技術革新とグローバル化の影響
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
マルクスが予見しきれなかった中産階級は、今日急速に減少しつつある。近代経済学によれば、その理由はグローバル化が進んだことにより生産設備が発展途上国に移転したこと、コンピュータなどの技術革新によって管理部門の職が減少したことに求められる。マルクスの予言とは異なる経路ではあるが、マルクスが予見したような世界に近づきつつある中で、現状を分析しより良い社会に前進していくための手がかりとして、今こそマルクスの遺したテクストを読み返すことが求められている。(全10話中第6話)
時間:6分24秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2021年1月28日
≪全文≫

●中産階級の減少と格差社会の到来


 中産階級の出現は、『資本論』に書いてある通りの歴史発展は起こらなかったことを意味します。対して、最近の状況に目を向けると、中産階級が消えていっています。これまでの中産階級は、郊外で住宅を持って、それらしく資本家と共存していました。1950年代のアメリカでは、ブルーカラーの人々が郊外に一戸建てを持ち、それなりに余裕のある生活を送って、子どもを大学まで卒業させることができました。

 現在はまったく異なる状況となっています。中産階級は非常に厳しく、非正規雇用が増大しています。日本でもアメリカから20年程度遅れて、小泉改革以降そのような状況が生まれて、格差社会が出現しています。

 格差社会では、一握りの企業の役員や管理職の人々がそれなりの生活を送る一方で、大多数の人々がマルクスの描いた賃金労働者のようなその日暮らしとなって、貯蓄もできない状況となります。後者のような人の数が膨大になっており、大きな貧困層が形成されるという状況が、先進国で見られるようになってきています。これは、マルクスの予言が当たっているといえるのでしょうか。マルクスの見直しが求められるのは、このような状況にあるためです。


●近代経済学による中産階級の減少の説明


 近代経済学の理解では、地主、地代、資本家、配当、利子なども存在します。労働者も賃金を受け取ります。マルクス主義では、地代や配当は存在すべきではありませんが、近代経済学はこれらの存在を認めています。それでは、地代や配当、労働者の賃金はどのように決まるかというと、生産についての限界的な寄与、すなわち労働力の一単位の増加によって伸びた生産、つまり付加価値を労働者に対価として与えるという考えなのです。中産階級の賃金が減少しているという現象があるのですが、近代経済学はこの現象を二つの理由で説明します。

 一つは経済がボーダーレスになったことで、資本設備と技術がこれまで産業がなかった中国やヴェトナムなどに発展途上国、新興工業国に移動していったことです。これにより、産業の空洞化が起こります。そもそもアメリカでは生産活動を行わないため、アメリカに住んでいる限り労働者の寄与はほとんどなくなってしまいます。そのために賃金が下がっていってしまうのです。

 もう一つの理由は、ホワイトカラーによる生産活動の分解です。労...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏