マルクス入門と資本主義の未来
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マルクスの名著『資本論』はどのようにして誕生したのか
マルクス入門と資本主義の未来(2)経済学の歴史的発展
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
マルクスの初期の思想発展にヘーゲルが果たした影響は無視できない。しかし、ヘーゲル左派は社会に問題が出現するメカニズムに目を向けなかったため、マルクスは不満を感じ、経済の分析を通じてその点を克服しようと考えた。エンゲルスの庇護のもと、ロンドンで経済学の勉強に励むうち、その議論の中に胚胎していた矛盾を見つける。そうして、『資本論』の土台となる議論は生まれたのである。(全10話中第2話)
時間:13分01秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2020年12月31日
≪全文≫

●ヘーゲル哲学に不満を感じて経済の研究へ


 それでは、カール・マルクスに関する講義を続けます。第二回目の講義です。

 カール・マルクスは、最初は法律を勉強していました。当時の若者の多くと同様、父親に法律を勉強すると生活が安定すると助言を受け、エスタブリッシュメントになるために法律の勉強を始めました。しかし、彼は途中で法律を学ぶことに飽き、本当に学びたかった哲学を学び始めるのです。前回指摘した、ヘーゲルの哲学などを中心に勉強しました。しかし、ヘーゲルは体制派の思想家です。ドイツは立派でなくてはならず、立派な国家を建設しなければならないなど、ドイツにとって必要な提言を多く残しました。

 しかし、ヘーゲルよりもかなり後の世代に属するカール・マルクスには物足りなく感じられました。それは、社会の中に新しく出現している矛盾への対応に言及していないということでした。大きな工場が次々と建てられ、モクモクと黒煙が出るようになり、鉄道も開通するなど、社会は激変の只中にありました。

 その中でのし上がってきた、資本家、ブルジョアジーなどの新興階級が新たなドイツの担い手となっていました。しかしその一方で、膨大な数の人々が食うや食わずの生活で貧民街に住み、安い賃金で働かされていました。彼らの人間的生活の条件は酷いものだったのです。このような巨大な矛盾が生み出されていましたが、これを放置しておいていいのだろうか。これで立派な社会を建設したといえるのだろうか。これらの点について、ヘーゲルは何も指摘していません。そのため、マルクスはこの社会の現実を考える手立てをいろいろと追究していったのです。

 革命家の予備軍といっても過言ではないヘーゲル左派の人々は、ヘーゲル哲学を用いて社会を分析しましたが、マルクスはそこに限界を感じました。現在の社会に問題を見いだした場合、富裕層や権力者など特定の対象を見つけ、彼らを追放すればいいというアナキストのような思想になりがちですが、マルクスの考えではそのような思想は安直なのです。彼らを追放した後にどのように社会を組織すればいいのか、そもそもなぜ彼らのような存在が出現したのか、このようなメカニズムが分からなければ、本当に問題を解決することにはならないと考えました。

 このような考えに基づき、彼は経済に目を向けました。その理由は、当時の社会変革の根...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
グローバル環境の変化と日本の課題(6)組織改革と課題解決のために
働き方改革の鍵はエンゲージメント、経営者の腕の見せ所
石黒憲彦