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マルクス主義の非常に重要な概念「階級」とは何か

マルクス入門と資本主義の未来(4)階級闘争と共産党

橋爪大三郎
社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授
情報・テキスト
マルクス主義にとって重要な概念「階級」は、近代に特有のものではなく、形態を変えて古代から連綿と続いてきたものである。近代において「階級闘争」を妨げているのは、国家によるイデオロギーの操作であるため、共産党は国際的に一つの司令部を組織し、各国の労働者を団結させようと目論む。しかし、その中で党の無謬性を前提とする組織原則を取らざるをえず、問題含みの存在になってしまう傾向がある。(全10話中第4話)
時間:15:03
収録日:2020/09/09
追加日:2021/01/14
≪全文≫

●古代から近代に至る階級闘争の歴史


 それでは、四回目の講義に移ります。今回のテーマは「階級闘争」です。「階級」はマルクス主義の非常に重要な概念で、この世界の歴史を「階級闘争の歴史」として認識するのです。

 「階級」とはどのようなものなのでしょうか。「階級」とは、ものを所有する権利、すなわち所有権によって決定されるとマルクスは考えました。これは非常に優れた洞察です。

 近代社会についていえば、資本を誰が所有するかが非常に重要です。資本を所有するのが資本家であり、資本を持たず賃金に依存しているのが賃金労働者です。資本家と賃金労働者に階級が分裂すると、マルクスは見立てました。土地を所有している地主も近代社会には存在していますが、いわば脇役にすぎず、資本家の子分のような役割に甘んじています。ですので、分析の際にはあまり重視しなくても良いということになります。資本家とも労働者とも異なる、自分で仕事をしている職人や商店主なども存在していますが、単純に議論を進めるために無視しています。したがって、資本の持ち主である資本家が一つのグループをなしているのです。

 昔からそのような状況であったわけではありませんでした。古代、中世、近代と三つの時代に区分して説明すると、まず古代では奴隷を所有している人々が奴隷主で、所有されている人々は抑圧を受けているという、この二大階級に区分することができます。古代では、大きな川のほとりに平地が広がっており、その土地に小麦などを植えると大きな収穫を得られて豊かになることができました。しかし、ただ土地があっても意味がありません。むしろ、人口に比して土地は余りぎみでした。土地を豊かな富の源泉とするためには、そこで労働を行う必要があります。そこで無理やり人を連れてきて、労働を強制していたのです。自由がない状況で働かせるという奴隷制です。この奴隷制が生産のメカニズムとして普及し、社会を二つの階級に分けました。これは歴史の法則によって、滅んでしまう社会だったのです。

 中世になると、土地を誰が所有しているかが重要となりました。土地を所有している封建貴族と土地に縛り付けられている農奴が出現し、再度階級対立に陥りました。このような社会も継続しますが、社会内部の矛盾によってやがて滅びました。近世、近代社会では資本家階級が勃興しました。したがって、三段階に分かれていますが、全て所有関係によって階級が決定されており、これを歴史の法則としたのです。

 古代より前には、奴隷制が存在しませんでした。構成員全員でものを所有する、「原始共産制」と呼ばれるシステムが取られていました。ここには階級関係はありませんでした。これは失われた理想社会、共同体、「コミューン」とされました。コミューンを理想化する考えが、コミュニズム、すなわち共産主義なのです。

 翻って、資本主義社会では資本家が資本を私的に所有しているがために、階級対立が引き起こされてしまいます。資本家を打ち倒して、資本を公共的に所有すれば良いのではないかと考えるのが、広い意味での社会主義、あるいは共産主義です。社会主義、あるいは共産主義が実現すると、やがて階級がなくなり、高度に発達した産業文明でありながら、階級が存在せず皆が楽しく社会が訪れるでしょうという議論です。このように歴史は動くとしたのです。


●共産主義イデオロギーを広めるために国際的な活動を行う


 さて、歴史の法則性というものがあります。階級闘争が起こると、労働者は団結して資本家と闘おうと考えるのですが、第一にそのような政治情勢にはなっていません。また労働者自身はそもそもそのようなことをあまり考えていません。これはなぜなのか。

 マルクス、あるいはマルクス主義によると、国家や政府の存在がそうした発展を妨げているということです。国家は警察や軍隊を持っています。警察は犯罪を取り締まり、軍隊は警察では手に負えない場合に出動し、無理やり政府を守ります。これを「暴力装置」と呼びますが、国家暴力装置があるからだというわけです。資本家を打ち倒し社会をつくり変えるには、所有権を否定する必要があるので、必然的に犯罪となってしまいます。警察がそうした共産主義者、すなわち犯罪者を取り締まります、しかし、あまりに数が増えてしまうと軍隊がこれを鎮圧します。このように二段構えで抑圧されているというのが、マルクスの見立てです。

 しかし、それと同時に「イデオロギー」も役割を果たします。イデオロギーとはものの考え方です。証拠がなくとも、人の考え方を左右するものがイデオロギーなのですが、資本主義国家はイデオロギーを流布しているのです。新聞などのマスメディアや、学校教育、宗教など、ものの考え方を人々に広める手段はいろいろあります。そ...
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