マルクス入門と資本主義の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マルクス主義の非常に重要な概念「階級」とは何か
マルクス入門と資本主義の未来(4)階級闘争と共産党
政治と経済
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
マルクス主義にとって重要な概念「階級」は、近代に特有のものではなく、形態を変えて古代から連綿と続いてきたものである。近代において「階級闘争」を妨げているのは、国家によるイデオロギーの操作であるため、共産党は国際的に一つの司令部を組織し、各国の労働者を団結させようと目論む。しかし、その中で党の無謬性を前提とする組織原則を取らざるをえず、問題含みの存在になってしまう傾向がある。(全10話中第4話)
時間:15分03秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2021年1月14日
≪全文≫

●古代から近代に至る階級闘争の歴史


 それでは、四回目の講義に移ります。今回のテーマは「階級闘争」です。「階級」はマルクス主義の非常に重要な概念で、この世界の歴史を「階級闘争の歴史」として認識するのです。

 「階級」とはどのようなものなのでしょうか。「階級」とは、ものを所有する権利、すなわち所有権によって決定されるとマルクスは考えました。これは非常に優れた洞察です。

 近代社会についていえば、資本を誰が所有するかが非常に重要です。資本を所有するのが資本家であり、資本を持たず賃金に依存しているのが賃金労働者です。資本家と賃金労働者に階級が分裂すると、マルクスは見立てました。土地を所有している地主も近代社会には存在していますが、いわば脇役にすぎず、資本家の子分のような役割に甘んじています。ですので、分析の際にはあまり重視しなくても良いということになります。資本家とも労働者とも異なる、自分で仕事をしている職人や商店主なども存在していますが、単純に議論を進めるために無視しています。したがって、資本の持ち主である資本家が一つのグループをなしているのです。

 昔からそのような状況であったわけではありませんでした。古代、中世、近代と三つの時代に区分して説明すると、まず古代では奴隷を所有している人々が奴隷主で、所有されている人々は抑圧を受けているという、この二大階級に区分することができます。古代では、大きな川のほとりに平地が広がっており、その土地に小麦などを植えると大きな収穫を得られて豊かになることができました。しかし、ただ土地があっても意味がありません。むしろ、人口に比して土地は余りぎみでした。土地を豊かな富の源泉とするためには、そこで労働を行う必要があります。そこで無理やり人を連れてきて、労働を強制していたのです。自由がない状況で働かせるという奴隷制です。この奴隷制が生産のメカニズムとして普及し、社会を二つの階級に分けました。これは歴史の法則によって、滅んでしまう社会だったのです。

 中世になると、土地を誰が所有しているかが重要となりました。土地を所有している封建貴族と土地に縛り付けられている農奴が出現し、再度階級対立に陥りました。このような社会も継続しますが、社会内部の矛盾によってやがて滅びました。近世、近代社会では資本家階級が勃興しました。したがって、三...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助

人気の講義ランキングTOP10
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部