為替レートから考える日本の競争力・購買力
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「50年ぶりの円安」に至る円相場の動向とその歴史的背景
為替レートから考える日本の競争力・購買力(2)円安の歴史的背景と日本の課題
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
1995年以降、実質為替レート指数は円安に転じたのだが、それはなぜか。また、なぜ足許では購買力平価から乖離した円安水準になっているのか。今回は「50年ぶりの円安」に至った実際の円相場の動向を振り返り、その背景にあった中国の台頭や東日本大震災などの社会情勢の影響や産業構造の変化について解説しながら、これからの日本が取り得る施策を展望する。(全2話中第2話)
時間:11分31秒
収録日:2023年7月19日
追加日:2023年9月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●名目、実質為替レートで振り返る「50年ぶりの円安」に至るまで


 さて、次のページです。最初(第1話)に、キリのいい架空のビッグマック価格をベースに考え方を整理しましたが、それと同じやり方で、実際の数値を基に振り返っていきます。

 まず名目為替ですが、円高のピークは左から1、2列目のドル円レート、あるいは名目実効レートのグレーの欄で、2011年がピークです。一方、実質為替レートの円高ピークは、その隣の列で、1995年であることが確認できます。「100」となっているところです。

 ここで、何度も出てくる1995年以降を考えてみれば、1995年から2011年の間は、名目為替が円高になる以上に、日本より海外の物価の上がり方が大きくなりました。

 下段の青い行の物価指数の青囲みの部分を見てください。この間、日本はマイナス1.46パーセント、一方、海外はプラス60.2パーセントです。これにより、取引されている名目為替レートでは円高になったのに、実質的には円の価値は下落しました。

 次に、2011年から2023年の間は、名目為替レートが大きく円安になり、さらに物価上昇率も海外のほうが大きく、実質的な円の価値の下落はさらに進みました。その結果、真ん中の赤囲みにあるように、実質実効為替レート指数は1995年の半分以下の40.69となりました。そしてこれが、1971年の38.22とほぼ同じ、つまり50年前とほぼ同じ水準の円安ということです。


●「50年ぶりの円安」の根底にある産業構造の変化


 次のページをご覧ください。それではなぜ1995年以降、実質為替レート指数は円安に転じたのでしょうか。そして、なぜ足許では、購買力平価から乖離した円安水準になっているのでしょうか。これらについて考えたいと思います。

 まず1995年から2011年ですが、この間、中国の台頭やグローバル化により、日本の輸出競争力が相対的に低下しました。日本の製品は高品質でしたが、中国をはじめとしたアジア諸国の製品も急速に品質が向上しました。また、アジア通貨危機以降、これらの国々の通貨は割安になっていたため、価格上の競争力もありました。

 かかる中、輸出材の価格を下げ競争力を確保する企業努力が日本にはあったように思います。しかし、その裏には、人件費や調達財の値下げ交渉など、コス...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(7)AIと倫理の問題と法整備の可能性
AIに正しい倫理を学ばせるには?徳倫理学のススメ
中島隆博
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
編集部ラジオ2026(2)「時代の大転換期の選挙」特集を解説!
「大転換期の選挙」の前に見ておきたい名講義を一挙紹介
テンミニッツ・アカデミー編集部
おもしろき『法華経』の世界(10)未来への智慧と希望
「未来応化=どんな未来も大丈夫」…ブレない臨機応変の力
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
これからの社会・経済の構造変化(4)日本企業の課題と組織改革の壁
日本の場合、トップダウンよりボトムアップで変えるべき?
柳川範之
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
戦争は絶対してはいけない…外交官の母が説いた平和の尊さ
小原雅博
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二