岸田内閣「新しい資本主義」を徹底検証
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「黄金の3年間」で岸田政権は使命を果たすことができるか
岸田内閣「新しい資本主義」を徹底検証(4)政策内容と見えぬ時代認識
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
2022年6月に閣議決定された新たな国家戦略には、「人への投資」を重要事項とした政策プランが網羅的に掲げられている。しかし、そこには一貫した基本戦略もなければ、理論に裏打ちされた方法論も示されていない。「黄金の3年間」を手にした岸田政権は、一人負けの日本を逆転させる大戦略の構築が重大な使命となる。(全4話中第4話)
時間:15分09秒
収録日:2022年7月7日
追加日:2022年10月13日
≪全文≫

●ピントのずれた「人への投資」計画


 ちょっと恐縮ですが、ここで私なりのコメントをします。

 人への投資について、企業に賃上げを促すと言っているのですが、賃金決定は経営者の専権事項なのです。前にも言いましたが、賃上げは、需要が増えたり生産性の向上が見込めたりする場合に経営者が行うことです。岸田政権は、賃上げ分の税額控除を行うと言うのですが、これは実質上の賃金補助なので、補助分だけの賃上げはあっても波及効果はあるはずがない。

 それから、NISAという少額投資非課税制度の拡充についてです。iDeCoは個人型確定拠出年金なのですが、その加入条件を現状の65歳から70歳までに拡大することを検討するということです。これは量的に非常に少ない。国の資金の流れを投資に向けるような効果は、非常に限界的にはあるかもしれませんが、ほとんど見えないほど小さいのです。

 アメリカで個人資産の6割が株式やリスク資本に投入されているのは、長期的に経済成長が続いていたことが最大の原因です。日本は1990年代以降、経済成長はほとんどなく、投資収益が期待できないので、人々が備蓄資産を買わないのです。よって、投資信託なども火が消えたようになったのは当たり前です。ポイントは、資産を投資に向けるには経済成長を促進することが基本中の基本だということです。

「資産所得倍増プラン」を年末までに策定すると言うのですが、今、具体的に出ているものにはまったくその効果はないと思います。これからが要注目です。

 それから、非正規を含む100万人を対象に能力開発や再就職支援すると言うのですが、100万人では、労働市場の流動化政策の対象としてはあまりに小規模です。勤労者は日本に約6000万人いらっしゃるのです。100万人はそのうちの数パーセントです。それで流動化するはずがありません。成長産業部門への移動性を高めるには、少なくもおそらく2000~3000万人の規模で、能力開発や再就職支援をする必要があると思います。

 ところが、今まで日本は、政府とその関連の職業訓練センターとが(能力開発や再就職支援を)引き受けていたのです。それから、個別の企業が成長するので、企業内で訓練していました。被支援者は数千万人いたと思いますが、その時代...

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