●貧困の実態を把握できていない政府
皆さんと一緒に、これまで岸田首相が「分配」に関して具体的に何をしてきたのかを少しフォローしてみたいと思います。分配と抽象的にいうと、何のことだかよく分かりませんので、具体的にいくつか申し上げます。
2021年の暮れ、岸田内閣が動き出してすぐですが、18歳以下に10万円(相当)を給付しましょうという議論があったことを覚えておられると思います。それを年末までに給付したいのだということで、かなり急いだのです。岸田首相に圧力をかけたのはおそらく公明党だと思います。給付の定義はどうするかというと、親の所得が960万円未満の家庭に給付するというのです。実はこれは相当な高所得の人を含みます。仮に夫婦共稼ぎで、夫が950万円ぐらい稼いでいて、妻が800万円ぐらい稼いでいると、世帯としては千数百万円の所得ですから、中産階級の上ぐらいでしょうか。こういう世帯にも10万円を配るということにしたのです。
これは非常に不公平だと思います。もっと貧乏な人がいるわけで、その恵まれない人を救済するのか、それとも若い人にお金を渡して消費を喚起するのか、どちらなのか判然としない政策でした。
なので、経済政策としてはものすごく非効率です。高所得者も含んでしまうからです。救済なのか、消費喚起なのか、よく分かりません。救済だとしたら、とんでもない間違いです。
私はある大きな大学の理事長をしていましたけれど、コロナ禍にアルバイトがないので、朝の給食を実施したら、何百人の学生がもらいに来ました。本当に苦労している学生さんもいるのです。
それから、(最初の10万円給付の時、)何十人かの経営者と一緒になって、たくさんの人に声を掛けて億の単位でお金が集まり、それを毎日の食事をちゃんと食べられない子どもたちに配ろうと、色々なネットワークを使って実行しました。本当に食べられない子がいるのです。だから、子ども食堂などはずいぶんやられていて、全国で何十カ所かあります。そういうところには本当にお金を渡さなきゃいけないのですが、それをしていないのです。
実態をちゃんと探そうと思えば、困っている子どもたちや若者はたくさんいるのです。ということは、データを政府は掌握していない。要するに、DXといいますけど、デ...