衰退途上国ニッポン~その急所と勝機
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問題は日本的雇用慣行の機能不全…鍵は労働市場の流動性
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(4)賃金を上げるための改革
政治と経済
宮本弘曉(一橋大学経済研究所教授)
賃金の上がらない要因として、「労働生産性」に引き続き「労働市場の構成」に焦点を当てる。日本の労働市場は「専業主婦つき男性正社員」を想定してきたが、現在は想定外の労働者が増加し、それが社会に歪をもたらしている。これらを踏まえ、賃金の上昇をもたらすために日本が求められる変化とは何かを解説する。(全6話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分29秒
収録日:2023年6月30日
追加日:2023年11月21日
≪全文≫

●正社員より給料の低い非正規社員が増加した


 (労働生産性が伸び悩んでいる)もう1つのファクターを説明させていただきたいと思います。先ほど、賃金の決定要因に「労働市場の構成」が影響するというお話をさせていただきました。これは一体何かというと、日本で非正規社員の方が増加をしているということです。図をご覧いただきたい。

 この図は、日本の非正規雇用者の数の推移、それから割合の推移を表したものです。今から40年ほど前の1984年は、日本全体で非正規社員の数は600万人ほどで、雇用者全体で占める割合(シェア)は15パーセント程度でした。つまり7人に1人が非正社員という状況だった。その後、非正社員が右肩上がりで増えていき、現在はその割合が4割近くになっています。ですから、かつてはどちらかというとあまりスタンダードな働き方ではなかった非正社員が、今では標準的な働き方になっているということです。

 そこで非正社員が増えたことが、どう賃金に影響したのかという話になってくるわけです。正社員と非正社員の賃金の違いを比較してみたいと思います。

 この図は、正社員と非正社員の時給を比べたものです。線が4本ありますが、一番下の線と一番上の線を見比べていただきたい。一番上の線が正社員の時給になっていて、一番下のグレーの点線が非正社員の時給です。

 正社員の時給はほぼフラットで、動いていないことが分かります。一方、非正社員の賃金は、2012年頃から徐々に上昇傾向にはある。とはいえ現在、正社員と非正社員は給料を比べると、非正社員の給料は正社員の6割程度になってしまっているということで、かなりギャップがあります。

 ここで考えたいことは、経済全体で非正社員の割合が増えてきて、そして彼らのお給料は相対的に低い。相対的にお給料が低いほうが経済全体で増えてきたので、平均的な賃金が伸び悩むということが起こっています。ですから、日本で賃金が上がっていない背景には非正社員が増えたという点があって、これがまさに構造問題という話になってくるわけです。

 今後賃金が上がるのかどうかということを考える際には、この正社員と非正社員の賃金ギャップが解消する、あるいは労働市場の構造が変わってくるといったことがないと、なかなか賃金...

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