衰退途上国ニッポン~その急所と勝機
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「日本病」をもたらす低賃金、低物価、低成長、高債務
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(2)景気低迷を招く「日本病」の正体
宮本弘曉(一橋大学経済研究所教授)
日本は30年ほどずっと「日本病」といわれる症状に陥っているといわれている。その要因として、3つの「低」と1つの「高」があると宮本氏は言う。それらはいったい何か。また、なぜいまだに「日本病」から回復しないのか。一般的に不景気の際には財政政策が有効だといわれるが、現在の日本は財政政策が効果を発揮しにくい状況にある。それはなぜか。今回は、日本経済が弱くなった要因とされる「日本病」の中身と財政政策の有効性について解説する。(全6話中2話)
時間:18分03秒
収録日:2023年6月30日
追加日:2023年11月7日
≪全文≫

●「日本病」にかかり「衰退途上国」となってしまった日本


 今、日本円が非常に弱くなってしまったというお話をさせていただきました。ではなぜ、日本円がこれほど弱くなってしまったのかというと、これは日本経済が弱くなってしまったということを表しているかと思います。

 現在、日本は「日本病」と呼ばれる症状に陥っているといわれることがあります。これは一体何かというと、3つの「低」と1つの「高」に特徴づけられると考えられています。

 1つ目の「低」は、先ほど説明をさせていただいたように物価が低い、安い国になってしまったということです。では、2つ目の「低」は何かというと、「低成長」です。日本経済はこの30年間ほど、ずっと元気がない状態が続いています。

 ここで図をご覧いただきたいのですが、こちらは1人当たり名目GDPについて、世界における日本のランキングを表したものです。

 一国の経済規模を表す指標としてGDPがあるわけですが、経済規模は人口に左右されます。人口が多ければGDPは大きくなる傾向にあるわけです。そこで国民1人ひとりがどのくらい豊かなのかを知るために、そのGDPを人口で割ったものがよく使われます。これが「1人当たりGDP」と呼ばれるものです。

 「日本における1人当たりの名目GDPが世界の中で第何番目なのか」を表したものが、この図です。縦軸は順位を表していて、上に行くほど順位が高く、下に行くほど順位が低いということです。図を見ていただくと分かりますが、1990年代、日本は世界ランキングのトップ5にほとんどの年で入っていました。

 ところが2000年代に入ると、ランキングがどんどん落ちていってしまったのです。そして2021年には、28位まで低下しています。日本は先進国ですけれども、ここまで順位が落ちてしまっているということで、最近では「衰退途上国」と呼ばれることもあります。経済がかなり凋落してしまっていることが、この図から分かると思います。

 1人当たりのGDPだけが低下しているのではないかと思われるかもしれませんが、実はいろいろなデータが、日本の経済は元気がないということを示しています。

 もう一つ、図を用意しました。スイスに「IMD」と呼ばれるビジネススクールがあるのですが、このIMDがいろいろなラン...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(2)戦争省とチャーリー・カーク暗殺事件
チャーリー・カーク暗殺事件とは?その真相と政権への影響
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏