●賃金と労働生産性をリンクさせる賃金体系の必要性
日本の労働市場が硬直的であるという話をさせていただきましたが、ではどうしたら流動的になるのか。また、流動的な労働市場では何が求められるのかという話をさせていただきたいと思います。
これは、経済主体ごとに行うことが変わってきます。企業の視点、労働者個人の視点、それから政府の視点という3つの視点から労働市場の流動化をどうやって進めていけばいいのか、また何が求められるのかを考えていきたいと思います。
まず企業ですが、労働市場が流動化してくると、賃金の決め方を少し変えなくてはいけません。今まで日本の企業は年功賃金で、勤続年数に合わせて給料が上がっていくというシステムを使っていたわけですが、これでは都合が悪くなってきます。
なぜかというと、流動的な労働市場ではマーケットで賃金が決まるようになっています。というのも、もし今働いている労働者が他の企業に移るとなると、自分の企業の賃金と相手の企業の賃金にギャップがあると、逃げてしまう。だから、市場の賃金を見ながら労働者にお給料を払わなくてはいけないという話になってくるわけです。ですから、賃金体系を少し変える必要があります。
具体的にどう変えればいいかというと、賃金と労働生産性をリンクさせるように賃金体系を設定する必要がある。これは「成果主義」といわれたりしますが、労働の成果に見合った給料体系にしてくことが、流動的な労働市場では重要になってきます。
賃金を生産性と等しくすると、実は企業にとっても労働者にとってもいいことがあります。それは何かというと、まず全ての人間が雇用機会に恵まれるようになります。日本の場合は年功序列型の賃金になっていて、若い頃には生産性よりも低めの賃金を支払う。一方、年配になってくると生産性以上の賃金をもらえる。これが年功序列型の賃金の特徴です。
これでは、例えば年配の方を雇いたいと思ったときに、高いお給料を払わなければ雇えなくなってしまいます。でも、生産性以上の賃金を払ってまで雇うという企業はないのです。そうなると、高齢者は雇用機会に恵まれない。ですが、生産性に見合う賃金を支払っている以上、企業は損をしませんから、高齢者を雇うこともできるわけです。これは高齢者だけではなく、ありとあらゆる人が「賃金=生産性」であれば雇用機会に恵...