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世界で最も自己投資しない日本人…もっとスキルアップを

衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(6)流動的な労働市場で求められること

宮本弘曉
東京都立大学経済経営学部教授
情報・テキスト
硬直的な日本の労働市場を流動化させるためには何が必要なのか。また、流動的な労働市場では何が求められるのか。企業の視点からいうと、一つのポイントは、賃金と労働生産性をリンクさせる賃金体系である。「成果主義」といわれるが、労働の成果に見合った給料体系にしていくことが流動的な労働市場では重要になってくる。実は賃金と生産性を等しくすると、企業にとっても労働者にとってもいいのだ。どういうことなのか。ということで、今回は企業、労働者個人、政府という3つの視点から、それぞれ必要なことを解説する。(全6話中6話)
時間:13:18
収録日:2023/06/30
追加日:2023/12/05
≪全文≫

●賃金と労働生産性をリンクさせる賃金体系の必要性


 日本の労働市場が硬直的であるという話をさせていただきましたが、ではどうしたら流動的になるのか。また、流動的な労働市場では何が求められるのかという話をさせていただきたいと思います。

 これは、経済主体ごとに行うことが変わってきます。企業の視点、労働者個人の視点、それから政府の視点という3つの視点から労働市場の流動化をどうやって進めていけばいいのか、また何が求められるのかを考えていきたいと思います。

 まず企業ですが、労働市場が流動化してくると、賃金の決め方を少し変えなくてはいけません。今まで日本の企業は年功賃金で、勤続年数に合わせて給料が上がっていくというシステムを使っていたわけですが、これでは都合が悪くなってきます。

 なぜかというと、流動的な労働市場ではマーケットで賃金が決まるようになっています。というのも、もし今働いている労働者が他の企業に移るとなると、自分の企業の賃金と相手の企業の賃金にギャップがあると、逃げてしまう。だから、市場の賃金を見ながら労働者にお給料を払わなくてはいけないという話になってくるわけです。ですから、賃金体系を少し変える必要があります。

 具体的にどう変えればいいかというと、賃金と労働生産性をリンクさせるように賃金体系を設定する必要がある。これは「成果主義」といわれたりしますが、労働の成果に見合った給料体系にしてくことが、流動的な労働市場では重要になってきます。

 賃金を生産性と等しくすると、実は企業にとっても労働者にとってもいいことがあります。それは何かというと、まず全ての人間が雇用機会に恵まれるようになります。日本の場合は年功序列型の賃金になっていて、若い頃には生産性よりも低めの賃金を支払う。一方、年配になってくると生産性以上の賃金をもらえる。これが年功序列型の賃金の特徴です。

 これでは、例えば年配の方を雇いたいと思ったときに、高いお給料を払わなければ雇えなくなってしまいます。でも、生産性以上の賃金を払ってまで雇うという企業はないのです。そうなると、高齢者は雇用機会に恵まれない。ですが、生産性に見合う賃金を支払っている以上、企業は損をしませんから、高齢者を雇うこともできるわけです。これは高齢者だけではなく、ありとあらゆる人が「賃金=生産性」であれば雇用機会に恵まれるようになる。

 これは企業側にとってもメリットがあります。いろいろな人が職場にいるようになると、「補完性」が働くのです。これはIMFの調査研究で分かっていることですが、同じ仕事を、例えば同性同士で行うよりは、男性と女性で行ったほうが生産性は高まります。同じ仕事を同年代の人で行うよりは、若い方と年配の方を組み合わせて行ったほうが生産性は高まるということが分かっています。

 これはなぜかというと、性別や年齢で持っているスキルセットや経験が違うからです。異なった方が集まることによって化学反応が起こり、生産性が高まるということがよく言われています。ですから、「賃金=生産性」にして全ての人が雇用機会に恵まれれば、職場で補完性が生まれ、生産性が高まるということになってくるわけですね。

 そうすると、優秀な人材に高いお給料を払えるようにもなるわけです。海外では優秀な人材に高いお給料を払うことはスタンダードなことですから、それが日本でもできるようになってくる。また賃金を高めることによって、労働者のエンゲージメントが高まる可能性もあるのです。

 ただ、賃金を生産性とイコールにするとなると、重要になってくるのが「人事評価」です。これまでは年功序列でやってきたので、そこまで人事評価をしっかりやらなくてよかったかもしれませんが、より厳密にやっていかなくてはいけない。どうやって労働成果を測るのか、どうやったら成果を測った上で労働者の努力やインセンティブを引き出せるのかといったことを考慮した上で、人事評価のあり方を変えていかなくてはいけない。これが企業側に求められるわけです。


●日本人はもっと自己投資してスキルアップすべき


 では労働者側に何が求められるかというと、スキルアップになります。やはり流動的な労働市場では、市場において自分の価値を出していかなくてはいけません。常にスキルをアップして、市場価値を高めておくことが重要になってきます。また、メガトレンドの変化、技術進歩やグリーン化という経済・社会の構造が変わる中で、それに適応するためにもスキルアップが必要になってくるわけです。

 ところが、日本の労働者が自己啓発(社外でトレーニングや研修に行ったり、勉強をしたり)をしているかというと、残念ながら、データはあまりいいことを示していません。パーソル総合研究所が行っているアンケー...
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