衰退途上国ニッポン~その急所と勝機
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の賃金が上がらない理由…賃金を決める4つの要因
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(3)日本経済浮上のカギを握る「賃金」
宮本弘曉(一橋大学経済研究所教授)
物価は上がっているのに賃金が上がらない…これでは消費が抑えられ、経済が停滞してしまう。よって日本経済浮上のカギを握る重要な要素は「賃金」で、持続的な賃金の上昇が必要になると宮本氏は言う。では賃金はどのように決まってくるものなのか。そもそも賃金を決定づけるものとして、経済学的には4つの要因があるという。そこで今回はその要因の一つである「労働の生産性」について解説を進めていくのだが、海外のデータなどと比較すると、日本の「労働の質」が下がってしまったなど衝撃的な事実が浮かび上がってくる。いったいどういうことなのか。(全6話中3話)
時間:13分41秒
収録日:2023年6月30日
追加日:2023年11月14日
≪全文≫

●賃金を決定づける4つの要因


 今後の日本経済を考える際に重要となってくるものは何か。私は「賃金」だと思っています。

 足元で物価が上がってきています。そこで賃金が上がらないとどうなるかというと、実質的な賃金が減少してしまいますから、人々の購買力が低下してしまうわけです。そうすると、節約志向に走り、消費が低迷し、経済が停滞してしまう可能性もある。ですから今後、日本経済が伸びていくためには、持続的な賃金の上昇が必要になってくるわけです。

 実際、岸田政権が2023年の年頭に「物価上昇を上回る賃上げを目指す」ということを掲げています。2023年の春闘で、約30年ぶりの賃上げ水準だったということで3.66パーセント賃金が上がったということがいわれています。

 1年間の単年度で見ると賃上げが起こっているのかもしれませんが、今後、持続的に賃金が本当に上がるのかどうか。これを考える際には、賃金の決定要因をしっかりと考えていかなければいけません。

 賃金の決定要因は、実はいくつかあります。経済学的に考えると、私は4つほどポイントがあると思っています。

 1つは、「労働市場の需要と供給のバランス」です。賃金とは、労働市場者の価格です。価格というものは基本的に、需要と供給のバランスで決まってくる。労働の需要が非常に旺盛で供給を上回っている、つまり人手不足の状態になると、賃金は上がりやすい。逆に、人が余れば賃金が上がりにくい。ということで、労働市場の需給バランスが賃金に影響する大きなファクターなのです。

 2つ目は何かというと、「労働の生産性」です。経済学では「賃金は労働の生産性と等しくなる」というのが教科書的な説明です。もちろん現実の経済は教科書通りには動きませんが、労働の生産性が賃金の主要な決定要因であるということは間違いありません。これはデータも示しています。

 そして、日本の労働市場を考える上で重要なものは「労働市場の構成」です。後ほど詳しく説明させていただきたいと思いますが、日本では今、正規雇用と非正規雇用という2つのタイプの雇用形態があり、この構成が実は賃金に大きな影響を与えています。

 最後が「インフレ」です。インフレ=物価が上がると、賃金が上がる。あるいは賃金が上がるから物価が上がる。どちらのパスも考えられます。
...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓