●金融危機は今後も警戒をゆるめることはできない
そうなってくると、これからのマクロ経済を見るときにやはり大きなポイントが2つあって、1つは金融危機が今は起きていないわけですが、このまま安定的に行けるかどうかということと、それからもう1つはコロナの感染をなかなか十分に抑えることができない中で、経済がどこまで戻っていくのかということだと思います。
金融危機についてはあまり悲観的な話をするつもりはありませんが、やはり警戒をゆるめることはできないだろうと思います。つまり、コロナ直後に起きかけた金融危機をなんとか政策で止めることができた。そういう意味では政策の影響というか効果は大きいのですが、ではそういう中で今後も金融がずっと安定しているかどうかということについては、やはり不安感を持っている人が多いだろうと思います。
●株価が高くても不安定要素が強い
例えば今、実体経済が悪いにもかかわらず株価が高い状況にあるという、1つの大きな理由は、先ほどから申し上げているように、中央銀行が非常に潤沢に資金を提供し、政府が大規模に財政を支援しているからなのです。ですが、逆にいうとそれだけ非常に低い金利の中でつくられている株価ということですから、ある種、非常に不安定感があるのは事実だろうと思います。
金融業界ではよく使われるらしいのですが、「バフェット指標」というものがあります。バフェットというのは有名な投資家なのですが、彼がよく発言するのでバフェット指標と呼ばれると思うのですが、分子にその経済の株価総額を取って、分母にGDPを取る。そうすると、日本は2020年の3月くらいにはこのバフェット指標が約98パーセントでほぼ株価総額とGDPが等しかったのですが、3カ月後の6月には120~125パーセントまで上がっているわけです。アメリカの数字はというと、バフェット指標は175あるいは180近い数字になっているのです。
要するにGDPに比べて株価が非常に高い、ということを表しているわけで、これは実はアメリカのケースで見ると、2000年にアメリカはITバブルで株が膨張して、ITバブルの崩壊が起きたわけですが、この時期にほぼ近い数字に今あるということだろうと思います。
だからといって、今の株式市場がバブルだと言い切ることは難しい。ある有名なエコノミストの名言の通り、バブルというのは「はじけてみて初めてバブル...