コロナ禍の世界経済とその行方
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
リバウンドとリカバリー―コロナ禍の経済を考えるポイント
コロナ禍の世界経済とその行方(2)真のリカバリーのために
伊藤元重(東京大学名誉教授)
これからのマクロ経済を見るうえのポイントとして、現時点では起きていない金融危機に対して、今後も警戒をゆるめることはできないだろうと伊藤氏は言う。非常に不安定な金融状況にあることは事実だからだ。また、コロナ以前から実体経済は良くないのに株価が高い水準を保っているという動きが、コロナ後さらに加速化している点も要注意だ。もう一つ、デフレ状態で膨張する財政赤字を抱える日本型現象が欧米にも広がっている点も看過できない。コロナ危機が長期化する中、政策でどこまで経済のリカバリーを促せるかが問われている。(全2話中第2話)
時間:10分41秒
収録日:2020年10月27日
追加日:2020年12月14日
≪全文≫

●金融危機は今後も警戒をゆるめることはできない


 そうなってくると、これからのマクロ経済を見るときにやはり大きなポイントが2つあって、1つは金融危機が今は起きていないわけですが、このまま安定的に行けるかどうかということと、それからもう1つはコロナの感染をなかなか十分に抑えることができない中で、経済がどこまで戻っていくのかということだと思います。

 金融危機についてはあまり悲観的な話をするつもりはありませんが、やはり警戒をゆるめることはできないだろうと思います。つまり、コロナ直後に起きかけた金融危機をなんとか政策で止めることができた。そういう意味では政策の影響というか効果は大きいのですが、ではそういう中で今後も金融がずっと安定しているかどうかということについては、やはり不安感を持っている人が多いだろうと思います。


●株価が高くても不安定要素が強い


 例えば今、実体経済が悪いにもかかわらず株価が高い状況にあるという、1つの大きな理由は、先ほどから申し上げているように、中央銀行が非常に潤沢に資金を提供し、政府が大規模に財政を支援しているからなのです。ですが、逆にいうとそれだけ非常に低い金利の中でつくられている株価ということですから、ある種、非常に不安定感があるのは事実だろうと思います。

 金融業界ではよく使われるらしいのですが、「バフェット指標」というものがあります。バフェットというのは有名な投資家なのですが、彼がよく発言するのでバフェット指標と呼ばれると思うのですが、分子にその経済の株価総額を取って、分母にGDPを取る。そうすると、日本は2020年の3月くらいにはこのバフェット指標が約98パーセントでほぼ株価総額とGDPが等しかったのですが、3カ月後の6月には120~125パーセントまで上がっているわけです。アメリカの数字はというと、バフェット指標は175あるいは180近い数字になっているのです。

 要するにGDPに比べて株価が非常に高い、ということを表しているわけで、これは実はアメリカのケースで見ると、2000年にアメリカはITバブルで株が膨張して、ITバブルの崩壊が起きたわけですが、この時期にほぼ近い数字に今あるということだろうと思います。

 だからといって、今の株式市場がバブルだと言い切ることは難しい。ある有名なエコノミストの名言の通り、バブルというのは「はじけてみて初めてバブル...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫