●総花的に羅列されただけの「成長戦略」
皆さん、大体お分かりになったと思います。「新しい資本主義」というけれども、アメリカやイギリスにアドバイスするのならいいのですが、日本でやることではありません。日本で分配といっても、実際にやっていることは間違っています。一体私たちはどこへ向かうのかと、国民は非常に心配になるはずです。
岸田文雄首相はお人柄がいい人ですが、演説をするたびに、どんどん中身が良くなっていっているのか、詳しくなっているのか、とにかく変化しています。
岸田首相は当初、分配論を強調していましたけれど、分配の原資は成長なのだという議論があちこちから出てきました。特に政界では安倍晋三さんあたりが強く言っているので、成長と分配の好循環を実現するという表現になったのです。
おそらく岸田首相がこれまで一番まともな趣旨を説明したのは、2022年1月17日の施政方針演説だったと思います。ここで何を言われたかというと、成長は分配の原資だから重要だということなのですが、成長するために何をしようとしているのでしょうか。
要点は、デジタルを活用した地方の活性化で、そのためには5Gやデータセンターなど、インフラとルールを整備する。マイナンバーカードと運転免許の一体化をする。サプライチェーンを強靭化する。最先端技術の官民研究共同開発を支援する。10兆円ファンドで先端的大学を支援する。今年(2022年)からスタートアップの創出を5カ年計画で行い、戦後第二の創業期を目指す。再教育、副業活用でスキルを向上させる。企業に人的価値の非財務情報の開示を義務づける。公共施設の民間運営方式を促進する。これらのグランドデザインを6月にすると言ったのです。これは1月の段階です。皆さんはどう思われますか。思いつきが並んでいるとしかいえません。
これは、これまでおっしゃった中で一番まともな成長戦略なのです。私から見ると、総花的に並んでいるのですが、どこに重点があるのかがまったく分かりません。優先順位と、選択と集中を示してもらわないと、戦略がまったく理解できません。
●具体的な方法が見えない政策プラン
岸田首相は、ロンドンでポリス・ジョンソン首相(編:2022年7月に与党・保守党...