●財政政策の功罪と課題
さて、財政再建の必要性とそれを早急に行った場合の悲劇の例も見てきました。これらも踏まえ、もう一度お金の生み方、使い方について、これまでの例を整理しながら、見ていきます。
まずいちばん上から、経常収支が黒字下の、とありますが、要はこれまでのアベノミクスによる財政・金融緩和政策です。中央銀行の大量の国債購入で金利を引き下げながら、銀行を経由した財政支出でお金を生み出したケースで、株価の上昇や過度な円高の修正などの好影響もありましたが、安易な財政出動が可能という実例ができてしまいました。産業育成、生産性の向上とセットで行わずに財政支出に頼ると、格差の拡大・再生産につながるという可能があることも確認しました。
また、かつての日本のバブル崩壊やリーマンショックのように、民間の貸出行為に任せきるような状況では、過度な景気の振幅が起きることも確認しました。一方で、急速な緊縮財政政策は、それ自体が正しいように見えてもタイミングなどを間違えると、景気の更なる悪化や治安悪化につながることも過去にはあった例から確認しました。
このように見ていくと、どういう政策が望ましいのか。本当に当たり前なのですが、過度に緩和したり、引き締めたりせず、また銀行などの金融機関にマネー創造を任せきりにするのではなく、バランスのいい政策が求められているように思います。
バランスのいい政策の中身とは、下段真ん中にもありますように、日本にあるさまざまな課題を解決するような事業や研究開発などを選定し、そこにこれまで増えたお金をきちっと回していく仕組みです。
●課題解決のための開発・教育に投資を
次で、そのバランスのいい政策の中身を、もう少し見ていきたいと思います。
上の囲みのいちばん上、そして下の概念図では左半分の話ですが、すでに政府・中央銀行・民間銀行からは十分なマネーが供給されています。そして今後は、下の絵の右側のように、「それをどう国内で循環させるかが重要」ということが見えてきたように思います。
仮に500兆円増加した流動性預金のうち、わずか10パーセントの50兆円が回転して、その都度10パーセントの付加価値を生めば、5兆円の付加価値が生まれGDPは約1パーセント伸び...