●日本銀行券の発行量は受動的に決まる
では、今日本銀行が刷っている日本銀行券、今1万円札は渋沢栄一の肖像画が使われていますが、これはいったい何なのか。お金を生んでいるのは日銀であり、銀行ではないだろうと思われるでしょう。
次に日銀券が実際に国民の手に渡る仕組みをみていきます。(スライドは)補足1-1です。
上段は左側から日本銀行、民間銀行、顧客のバランスシートを示しています。お客様には銀行預金のうち、いくらかを口座から引き出してお札(日銀券)に変えたいという需要があるとします。
民間銀行は、その需要に合わせて前もって日本銀行から日銀券を入手します。そのとき、お客様が身近な銀行からお札をおろすように、民間銀行が日本銀行に預けている預金から日銀券を引き出すような形で入手するのです。日本銀行が「銀行の銀行」と呼ばれる所以です。
そして、下段右側、お客様が銀行券を引き出すと同時に、真ん中の民間銀行のバランスシートでは、左側の、資産として一時的に持っていた銀行券と右側の負債のお客様の預金が同額だけ縮小します。こうして日銀券は皆様の手に渡っているのです。
したがって、いちばん下の囲みにもあるように、日銀券の発行量はお客様の需要によって決まっており、日銀がその量をコントロールすることは無理で、受動的に決まっています。よくいわれる、日銀がお札を刷って能動的にばら撒くというのは実際には不可能で、銀行券というものは銀行預金の一部が形を変えただけなのです。
●銀行が国債を買うとお金の総量が増える
さて、お金が生まれる仕組みはもう1つあります。それは、政府が発行した国債を銀行が購入し、その代金を財政資金として支払う場合です。政府が単に財政支出すればいいのではなく、銀行が国債を買うということ。言い方を変えると、銀行からお金を借りて財政支出するということがポイントです。
この表上段は政府が国債を発行したときのお金の流れを表しています。左から日銀、政府、民間銀行、お客様すなわち国民のバランスシートをみながら説明します。
まず真ん中2つ、政府と民間銀行のバランスシートをみます。まず政府が国債を発行します。これは政府が返済しなければならない義務で負債です。これを銀行が買い...