お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
米国ではどのようにお金が回っているか…日米比較で考える
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(4)資産循環の日米比較
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
日本の経済成長が停滞する一因として、お金の「死蔵」が挙げられる。その背景にある資金偏在の問題とは何か。財政支出の影響や日米のマネー活用の違いを検証し、日本の資産循環モデルの課題と改善策を考える。(全6話中第4話)
時間:12分14秒
収録日:2024年12月4日
追加日:2025年3月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●お金が「死蔵」される背景


 さて、次は、こうして生まれたお金が今、死蔵されているのではないかという現状について、その理由、背景を見ていきたいと思います。

 このグラフは冒頭に見たグラフです。一度確認したように預金、特に流動性預金が増えているけれど、GDPが伸びていません。では、この増えたお金はどうなっているのか。こうして増えた後、どのようにお金が移動しているのか。それについて、以下のような仮説を考えています。

 それは左囲みの上段にもありますが、なんらかの形で財政支出があり、それが最初は支援が必要な人に配賦されたとしても、生活に必要な資金等を支払っていると、その時点での経済構造的な高所得者にお金が回っていくのではないかということです。

 そして、場合によっては、援助を必要としない既得権益層にも直接補助金等が支払われているケースもあるかと思います。右の絵がそのイメージ図です。それぞれの棒グラフは左側の援助が必要な層から右に行くほど、所得や資産が多い層をイメージしています。

 そして、下のほうの赤い実線は生活するにあたっての必要な所得・資産のレベルですが、仮に援助が必要な低所得の方、(あるいは)被災者の方などに財政支出により支援金、補助金などを支払っても、その人たちが生活に必要なお金を使うと、結局はこの赤い部分のお金は既にお金のある人に回っているのではないかということです。

 つまり、右側の層は現在の経済構造においての勝ち組や既得権益がある組織、人々であるからこそ資産も所得も多いのです。財政で資金援助してもその構造自体は変わらないので、結局は右側の人々にお金が集まってしまうということです。

 そして、その人たちは、「予備的需要」と呼ばれる何かのためにとっておく金額を超えて死蔵してしまっている可能性が考えられます。もともと、予備的需要は左側下に注記していますが、将来不安などが背景にある需要なので、人によって感じ方も含めて絶対的な金額があるわけではなく、右側のイメージ図のようにグラデーションになっています。老後資金や何かに備えたお金は、なるべく多いほうがいいというのは、誰にでもある話だと思います。

 こうして財政によって資金援助が行われ、また時には政治的判断によ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏