円安の構造的メカニズム
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
悪い円安論に物申す、ヒステリシスの効果でデフレ脱却か
円安の構造的メカニズム(3)「高いニッポン」から「安いニッポン」へ
政治と経済
高島修(シティグループ証券 チーフFXストラテジスト )
2022年の円安加速によって「安いニッポン」「悪い円安論」が台頭してきたが、必ずしも悲観すべき状況とは限らない。「高いニッポン」だった時期から現在の円安に至るまでの経緯を振り返ることで、ポジティブな可能性が見えてくる。キーワードは「ヒステリシスの効果」だ。(全4話中第3話)
時間:12分59秒
収録日:2022年11月15日
追加日:2023年1月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●「安いニッポン」以前にあった「高いニッポン」の問題


 今回のシリーズでは円安問題についてお話ししておりまして、前回、前々回とも、構造的な観点から円安というものを取り上げてきました。こういった中で、2022年のこの円安加速によって、「安いニッポン」とか、「悪い円安論」というものも台頭してきていますので、それについてどういう考え方を持っているのかを少しお話しさせていただきたいと思います。

 結論からいいますと、私は悪い円安論にはかなり違和感を持っております。2022年に加速した円安というのは、10年、20年単位で見ると、日本にとっては比較的ポジティブな影響を持ってくるのではないかと考えております。どうしてそのように考えているのかを、時系列的に順を追ってお話ししていきたいと思います。

 「安いニッポン」というものがだいぶ話題になっていますが、そもそも「安いニッポン」の前に「高いニッポン」があったのだということを認識する必要があるのだということです。

 「高いニッポン」というのは、いうまでもなくバブル前後までの日本の状況であり、何もかもが高かったわけです。一つは土地の値段が高かったわけで、今、この講義を撮影しているオフィスから皇居が見えるのですが、日本のこの皇居(の値段)でアメリカのカリフォルニア州が買えたという時代です。他には、山手線(の値段)でアメリカ全土が買えたというような時代で、まず1つは土地の値段が高かったということです。

 2つ目は、この後お話ししていく通り、日本の株価が高かったということです。後は流通構造も高く、日本人の価格(1人あたりGDP)も非常に高かったわけです。

 どれくらい高かったのか、このIMF(国際通貨基金)の資料に基づき、1人あたりGDPを見てみると、1990年代前半に日本の1人あたりGDPが4万ドルを超えていて、当時3万ドルを下回っていたアメリカをはるかに上回っていたということがお分かりいただけるかと思います。

 重要なポイントは、これはドル建てで見た1人あたりGDPであります。何を申し上げたいのかというと、円建てで見ても高かった日本人の賃金が、1985年のプラザ合意から1995年までの円高によって、逆にいうとドル安によって、ドル建てで見てみると、日本人のコストが相当押し上げられたということです。要は土地も高くて、株も高くて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
「新しい資本主義」の本質と課題(1)新自由主義と『21世紀の資本』
新自由主義からの時代背景から「新しい資本主義」を問う
柳川範之

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉