●どういう形で介護が始まるのか
こんにちは。今日は「50代からの親の介護」ということで、お話をさせていただきます。私は介護・暮らしジャーナリストという肩書きで執筆・講演などをさせていただいています太田差惠子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
50代からの親の介護がそろそろご心配な方、もうすでに親の具合がちょっと悪くて心配しているという方、いろいろな方がいらっしゃると思います。どういう形で介護が始まるのかということから、まずシミュレーションをしていただきたいと思います。
お一人目はAさんです。「もしかして、介護?」というタイトル、「両親、元気だと思っていたが…」ということで、東京の50代の方の事例です。ご両親は岡山県のご実家で暮らしています(父80代・母70代)。
父親が「最近、疲れる」と元気がなかった。母親は「歳のせいよ」と言っていたけれども……。心配していたところ、父親が脳梗塞で倒れた。幸いにも、もうすぐ退院だそうです。でも、この先、両親二人だけで大丈夫なのか。
自分は東京で、両親は岡山。どうしたものかということで、こういう状況の方も多いのではないかと思います。今は、入院しても割と退院が早いのです。この方の場合、(父親が)脳梗塞ということだったので、もしかするとリハビリ病院などの提案もあったのかもしれませんが、あっという間に退院がやってきました。そうなると、「父親の面倒をどうやって見るんだ」ということになりがちです。
もうお一人、事例を持ってまいりました。「介護していた母親がガンに」のタイトルです。「母親まで倒れて、万事休す…」と言うBさんは、大阪にお住まいの50代の方です。
この方はご両親と同居です。おそらくシングル(独身)の方だったと思うのですが、父親の足腰が不自由で介護が必要になっていました。しかし、父親は介護保険の利用を嫌がられたということです。ご高齢の方で「サービスなんか使わない」という方は今、結構多いようです。
このBさんの父親もその利用を嫌がって、母親が介護をされてきたそうです。ところが、その母親がガンを発症して入院・手術をすることになりました。
これはご自分のこととしてご想像いただくと分かりますが、皆さま「結構厳しいなぁ」と思われるのではないでしょうか。(Bさんは)仕事を辞めて、介護をするしかないのではないかということで悩んでいらっしゃいます。困った、ということですね。
●増える百歳長寿、優しさだけでは介護は続かない
(2020年のデータですが)今、百歳以上のご高齢者は8万450人ということです(※2021年9月発表のデータでは8万6,510人)。最高齢は117歳。私は毎年ずっとこの数値を追ってきていますが、本当に年々非常な勢いで増えています。棒線のグラフを見ていただくと分かりますが、特に100歳以上の女性(ピンクに塗られた部分)の方が普通にいらっしゃいます。
結構なことです。結構なことだけれども、子世代のほうは「うーん」ということで、悩みが深かったりもします。親が100歳になったとき、皆さま(あなた)は何歳になるのか。親が100歳になると、お子さんのほうは70代、下手をすると80代という方もいらっしゃいます。
今、50代の方もこの先、親の状況いかんによっては介護期間が長くなります。私は介護の現場を1993年頃から取材していますけれども、本当に長いのです。こうなってくると、「親のために」「親だからなんとかちゃんとしてあげたい」ということでやろうと思っても、無理な状況になってきます。
これまで多くの方の状況を見てきましたが、今はご自分の仕事と親の介護の両立というように考えていても、そのうちお子さんのほうが定年退職を迎えて、自分も「老後」になっていく。なので、自分のほうが先に倒れてしまったなどという方もいらっしゃいます。
介護というと、「親だから」「育ててもらった恩がある」と言われる方がよくいらっしゃいますが、やはり優しさだけではできません。
介護は一つのプロジェクトと考えていただいて、お子さんのほうには司令塔になっていただくことが必要なのではないかと私は考えています。まだまだ100歳以上は急増してまいります。
●親が倒れたときの課題
では親が倒れたときの課題として、どんなことが起こってくるのでしょうか。
まず、仕事を休まなければならないということが起こってきます。よくあるパターンは、先ほどの事例の方のように、親が病気やケガで病院に担ぎ込まれるというパターンです。
たいていは皆さまが仕事をしているときに、携帯やスマホに病院...