●介護のお金でつまずく、3つの「ない」
「50代からの親の介護」でお話をさせていただきます。今回はお金の話です。
介護のお金は、皆さまとても関心の深いところだと思います。でも、お金のことにすごく関心が深いにもかかわらず、「考えていない」という方が多いのです。
(以下にあげる)3つの「ない」の状態では、介護のお金のことをうまくできるわけがない、と私は考えています。
1. どのお金で、つまり誰のお金で介護するか、計画がない。
2. どんなお金がかかるか知らない。
3. 介護費用を軽減する制度を知らない。
この3つの「ない」を言う人が非常に多いのです。でも、サービス利用にはお金がかかります。つまり、「知らない」と言っていないで、お金のことをしっかり考えておいていただく必要があるということです。
●介護のお金は、親のお金でマネジメント
まずは、ぜひ資金計画を立てておいていただきたいと思います。介護のお金、皆さまはどう考えていらっしゃるでしょうか。皆さまが負担しようと考えていらっしゃいますか。
中にはそういう方もいらっしゃいます。そして、「どうしよう」と戦々恐々としていらっしゃる方もいらっしゃいます。今の生活で結構手一杯なのに、これで親の介護までかかってきたら、お金はどうすればいいのか、と悩んでいる方もいらっしゃいます。
けれども、私はこう思います。「介護」という行為は、確かに子どもが主たる介護者になってマネジメントなどをしていくことが多いと思いますが、それは皆さまのためにすることではございません。親の介護は、親の自立した生活を応援するために行うものです。
ですので、介護のお金は、親のお金でマネジメントするのが本来の筋なのではないかと思います。なぜなら、親のためだからです。その代わりと言ってはなんですが、皆さま自身がいつか要介護になったときには、皆さまのお金で介護されることになるということです。
例えばそのとき、皆さまはまさかご自分のお子さんとか、お子さんのいらっしゃらない方は甥っ子・姪っ子に自分の介護のお金を頼ろうとは思っていないと思うのです。ですから、親にも親のお金を使っていただくのが基本だと思います。
●「親のお金」の情報を知り、「100歳計算」をする
親のお金で介護していくとなると、親の大切な情報を知る必要があります。例えば、預貯金や月々の年金額、民間医療保険や生命保険はどうなっているのか、不動産はどうか、ローンは残っていないのかなど、知らない方は結構多いのです。
親と同居の方はまだご存じかもしれませんが、別居の方では全く分からないというケースも多いのです。これは聞いていただくしかないと思います。聞きづらいとは思いますが、聞かないとどんな介護ができるか、考えようがありません。
一番分かりやすい例でいえば、施設介護を考えたとき、親のお金の情報が分からないと、どのぐらいお金があるか分からないので、どんな施設を選べばいいのか全く見当がつかないということになります。どこかの段階でこれを考える必要があります。
また、年金額がたくさんあるという親ならいいのですが、年金が乏しくて預貯金を割り算していくケースも出てきます。その場合に、ときどき「うちの親は85歳ぐらいまでしか生きないだろう」ということで、80歳の親の介護費用を5年で割り算される方がいらっしゃったりします。
そうすると、足りなくなってしまいます。100歳計算をしていただきたいのです。母親に関しては、105歳ぐらいで計算していただくほうが安心です。
これまでに私はたくさんの方に出会っています。「もう弱っているから、85歳ぐらいと思っていたら……全然、長生きするんです。(それ自体は結構なことなのですが、)施設のお金が足りなくなってしまった。どうしたらいいでしょうか」という質問を結構受けます。
●改正ごとに変わるサービス費用、充実しているのは今
スライドは介護費用の月々平均額です。でも平均額はあまり参考になりません。自分の親はどうかということになるので。
とはいえ、在宅では4万6000円という数字が出ています。この数字を細かく見ていくと、月々1万円から2万5000円が一番のボリュームゾーンということになっています(生命保険文化センター平成30年のデータ)。
施設のほうは11万8000円という数字が出ています。「高い」と思われるか「安い」と思われるかはさまざまでしょうが、家賃分を含むのですから、当たり前といえば当たり前です。
しかも、これは公的施設と民間施設をひとまとめにした平均額として出てきた数字です。だから、平均と...