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副作用に注意、知っておくべき「睡眠薬とのつきあい方」

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(7)高齢者のための睡眠

西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
情報・テキスト
「若い頃のようになかなか眠れない」という声をよく聞くが、高齢者は睡眠とどう向き合えばいいのか。さまざまな加齢現象により睡眠の質が低下するのはある程度許容しなければならないが、生活習慣で改善できる可能性はある。鍵となるのは規則正しい生活と日中の運動だ。他方、睡眠薬については注意すべき点がいろいろとあるという。(全7話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:15
収録日:2021/06/23
追加日:2021/11/25
ジャンル:
≪全文≫

●「若い頃の睡眠」と比べず、同年代の人と比較するといい


―― 最後に「高齢者の睡眠」ということですが、一般的には年を取るとなかなか寝にくくなるという話があるように、睡眠で悩む方は多いと思います。高齢者は、睡眠とどう向き合えばよろしいでしょうか。

西野 これはなかなか難しい問題だと思います。加齢現象というのは、どの細胞にも起こっているし、どの生理現象にも起こってきます。

 睡眠には、例えば光や体温が重要だと言ってきました。循環やホルモンも大事です。しかし、加齢によってそういう機能は減弱して、若いときと同じようではありません。

 体温にしても、入眠したときには体温が下降するということがあるから、深い睡眠に入り、寝付きがよくなるのですが、お年寄りになると、手足の循環なども悪くなって、熱が放散しない。だから寝付きが悪く、夜中に何度も目が覚めることになります。

 光への感受性も、白内障などの原因にもよるだろうし、成長ホルモンは放出されるのだけど、若いときと比べると放出量が減る。睡眠に関するホルモンとして松果体から放出されるメラトニンがありますが、それらの産生量・放出量も減る。だからある意味、睡眠の質が悪くなるのは当然といえば当然なのです。

 ただ一つ大事なのは、自分の昔と比べてもあまり意味がないので、同じ年代の人と比べて自分が極端に悪いかどうかというのは注意してもいいということです。寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚める。頻尿になってトイレに何回も行くといったことです。


●生活習慣の改善と目覚めが早いときの注意点


西野 若いときと比べると全然寝られないといっても、それは加齢現象だから仕方のないことで、ある意味許容しないといけません。そういったことをできるだけ予防ないし軽減することというと、やはり生活習慣だと思います。

 ただ、一つ気をつけていただきたいのですが、お年寄りで朝早く目が覚めて困るのは、リズムが前倒しになるからです。前回の話では大人も子どもも後ろ倒しになるところ、お年寄りは逆なのですね。

 その機序は、私も興味があって少し研究もしているのですが、まだ出版などで発表できるような内容にはなっていません。やはりリズムの移動があるようですね。

 ただ、お年寄りの場合、早く目が覚めて困るという人は、すぐに朝ごはんを食べたり、すぐに外へ出て体を動かしたりして太陽の光を浴びるということは逆効果になるのですね。

 そういったことで困っておられる方は、ある時間まで、本を読んだりして静かに過ごすのがいいと思います。それから朝食をして、だんだん活動を上げていくということです。

 お年寄りで睡眠に問題のある人は、日中の活動が活発ではないことも多いので、メリハリをつけることが大事です。

 どの統計にも出ていると思うのですが、運動がいい。お年寄りの場合だったら散歩でも充分です。ただ、あまり早い時間に目が覚めて散歩をすると、またリズムの問題が出てくるので、午前中あるいは夕方でもいいですから、散歩をすることが大事だと思います。


●鎮静型の睡眠薬服用は慎重に


西野 薬というのは、特に高齢者の場合、いろいろな副作用が出てくるので、睡眠薬に関しては注意する必要があります。処方する医者のほうも、実はそうしたことを考慮して、できるだけ副作用の少ないものを心がけています。

 お年寄りの副作用で気をつけたいのは、例えば鎮静型のベンゾジアゼピン系やノンベンゾ系(非ベンゾジアゼピン系)です。これらは日本では今でも多く使われているものですが、もともと抗不安薬で、睡眠効果が強いのを睡眠導入剤に用いています。

 こうした薬には筋弛緩作用があり、小脳にも作用して、ふらつきが出る。それから抗痙攣、健忘作用や意識障害が出ることがあります。お年寄りの場合では、せん妄状態にも陥ります。

 そういったものはお酒と効果が似ているので、お酒と一緒に服用すると、余計にそういった意識障害、せん妄状態が出てきます。

 昔の薬の作用時間は長く「持ち越し」効果が問題だったため、一時は「目覚めがいいから」と短いものが推奨されて多く開発されました。ところが、短いものは短いもので新たな副作用が出てきました。健忘や問題行動です。さらに「反跳性不眠」といって、薬を飲まないと眠れなくなるのです。そういった薬はできるだけ慎重に扱う必要があります。


●新しいタイプの睡眠薬がもつ多様性


西野 また睡眠薬にも多様性が出てきて、そういった鎮静型以外に、例えばメラトニンがあります。ただ、これは日本での認可はサプリとしては下りていません。

 メラトニンで一つ分かってきたのは、末梢の副作用として生殖に作用することです。実験用のマウスにはいろいろなものがあるのですが、メラトニンを作...
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