テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
Facebookでシェア Xでポスト このエントリーをはてなブックマークに追加

シフトワークによる脱同調に要注意…時差ボケへの対策は?

睡眠と健康~その驚きの影響(5)時差ボケと脱同調

西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
概要・テキスト
『スタンフォード大学西野教授が教える間違いだらけの睡眠常識』(西野精治著、PHP文庫)
amazon
シフト勤務者にとって避けて通れない問題がある。それは、時差ボケによる睡眠のリズムである。現在、日本では労働者の何割かがシフトワークに就いているが、この働き方では睡眠のリズムが崩れ、健康を大きく害する危険がある。ではシフトワークの労働者はどのように生活すればいいのか。今回は、昼夜逆転生活を送っているときに体に何が起こっているのか、健康への影響を最小に抑える方法は何かなど、シフト生活へのアドバイスを提示する。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:21
収録日:2025/03/05
追加日:2025/07/03
カテゴリー:
≪全文≫

●シフト勤務者は、いわば「時差ボケ」状態


―― 続きまして、睡眠の問題の中で、今までは比較的、病気にまつわるものでした。仕事に付随して睡眠のリズムが変わってしまうというケースに、1つはシフトワークの事例があります。日勤・夜勤を繰り返していく中で睡眠が徐々に難しくなっていくこともあろうかと思います。ここはどのように考えればよろしいでしょうか。

西野 これは非常に大きな問題です。正確な統計はないのですが、3割弱の方が日本でも何らかの形でシフトに就かれているのです。製造業でも、サービス業でも、それから警察・消防署、医療もそうで、これは今避けて通れないのです。

 実際に非常に不自然な、自然に反した生活を送っているということで、何が起こっているかというと、まったく一緒ではないのですが、時差ボケに近いのです。

 一番の問題は睡眠のリズムです。昼間に働いて夜は寝るという体内リズムが人間にはあるのです。24時間周期で動くものが多いので「サーカディアンリズム」(概日リズム)といったりします。例えば、体温(体の中の温度)は、昼間に高くて夜が低い。だから、昼間は覚醒度が高いし、パフォーマンスも高い。逆に、夜は体温が下がらないと良い睡眠が取れません。体温が高いままだと寝つきが悪い、または中途覚醒する。高齢者の場合は体温調整が悪くなって、そういったことが増えるのです。

 そういった状況は分かりやすくいうと、時差ボケです。生活、睡眠と体温など他のリズムがズレてくる。例えば、日本からアメリカ西海岸のサンフランシスコに飛行機で旅行するとします。昔、船で旅行していたときは、徐々に動くものだから時差ボケなどは起こりませんでした。時差ボケは時差のある場所に短時間で移動すると起こります。

 どういうことが起こるかというと、東京からサンフランシスコにジェット機で移動して、夜の便が多いのですが、朝10時頃に現地に着くとすると、東京時間では午前3時です。一番体温が下がっていて、もっとも眠い時間です。ところが、サンフランシスコでは朝10時だから「仕事だ」「観光だ」となる。眠いのだけれど興奮しているから、なんとか起きて観光して、食事もして、さあ夜に寝ようと思ったら東京では昼間の時間帯だから、体温が高くて寝られない。これが時差ボケです。

 最終的にはサンフランシスコのリズムに同調してくるのですが、そのズ...
テキスト全文を読む
(72時間無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。