●シフト勤務者は、いわば「時差ボケ」状態
―― 続きまして、睡眠の問題の中で、今までは比較的、病気にまつわるものでした。仕事に付随して睡眠のリズムが変わってしまうというケースに、1つはシフトワークの事例があります。日勤・夜勤を繰り返していく中で睡眠が徐々に難しくなっていくこともあろうかと思います。ここはどのように考えればよろしいでしょうか。
西野 これは非常に大きな問題です。正確な統計はないのですが、3割弱の方が日本でも何らかの形でシフトに就かれているのです。製造業でも、サービス業でも、それから警察・消防署、医療もそうで、これは今避けて通れないのです。
実際に非常に不自然な、自然に反した生活を送っているということで、何が起こっているかというと、まったく一緒ではないのですが、時差ボケに近いのです。
一番の問題は睡眠のリズムです。昼間に働いて夜は寝るという体内リズムが人間にはあるのです。24時間周期で動くものが多いので「サーカディアンリズム」(概日リズム)といったりします。例えば、体温(体の中の温度)は、昼間に高くて夜が低い。だから、昼間は覚醒度が高いし、パフォーマンスも高い。逆に、夜は体温が下がらないと良い睡眠が取れません。体温が高いままだと寝つきが悪い、または中途覚醒する。高齢者の場合は体温調整が悪くなって、そういったことが増えるのです。
そういった状況は分かりやすくいうと、時差ボケです。生活、睡眠と体温など他のリズムがズレてくる。例えば、日本からアメリカ西海岸のサンフランシスコに飛行機で旅行するとします。昔、船で旅行していたときは、徐々に動くものだから時差ボケなどは起こりませんでした。時差ボケは時差のある場所に短時間で移動すると起こります。
どういうことが起こるかというと、東京からサンフランシスコにジェット機で移動して、夜の便が多いのですが、朝10時頃に現地に着くとすると、東京時間では午前3時です。一番体温が下がっていて、もっとも眠い時間です。ところが、サンフランシスコでは朝10時だから「仕事だ」「観光だ」となる。眠いのだけれど興奮しているから、なんとか起きて観光して、食事もして、さあ夜に寝ようと思ったら東京では昼間の時間帯だから、体温が高くて寝られない。これが時差ボケです。
最終的にはサンフランシスコのリズムに同調してくるのですが、そのズ...