●“ショートスリーパー”はほとんどいない
―― 今、先生が非常に重要なお話をされました。睡眠に問題がある方はうつ病などになるリスクも高くなるということです。メカニズムとして、なぜ睡眠に問題があるとうつ病になってしまうのでしょうか。
西野 うつ病になると睡眠障害が必発なのですね。深い睡眠が出ない、それから最初のレム睡眠が短くなる。それだけでなく、眠れなかったり、睡眠が不規則であったりするときは、うつ病だけでなく他の精神疾患もそうですが、そうしたリスクも高くなります。それが悪循環のような形になって、いったんリスクのある人が発症すると、さらに睡眠障害がひどくなる。どこかで断ち切らないとなかなか治らない、ということになってくるのです。
だから、原因にも結果にもなり得る。相乗的に影響を与えるので、発症前でも発症後でもできるだけ良い睡眠を取って、心身の回復に努める(ことが大切です)。風邪なども同じです。そういう意味で、やはり睡眠は基本的な生命の維持に不可欠な生理現象といっても間違いではないと思います。
―― 先ほど先生から、適切な睡眠時間は個々の方々によって差がある、個体差があるというお話がありました。例えば、ナポレオンのようにいわゆる“ショートスリーパー”で、睡眠時間が3、4時間でも大丈夫という方もいる。およそ何パーセントほどの人がショートスリーパーやロングスリーパーなのか。また、それを決める要因は何でしょうか。
西野 先ほど、やや難しい言葉で「正規分布」といいました。丘のような形の、裾野が広がっている分布です。裾野の部分は頻度が少ないということですね。
ショートスリーパーとは、努力せずとも、もともとの睡眠時間が短い人です。睡眠時間が短いといろいろな疾患リスクが高くなるという話をしましたが、(ショートスリーパーは)特にそういった問題もなく、健康に過ごしている方です。そういう方は確かにおられる。芸能人でも、政治家でも、学者でも、実業家の方でもおられます。非常にアクティブ(活発)で、事業などに成功する。
ところがその分布を見ると、例えば睡眠時間4時間以下の人は1パーセント未満です。14時間以上の人も1パーセント未満です。その人たち全員が健康かどうかは分からないので、いわゆる健康なショートスリーパーといえば、4時間以下で規定すると1パーセントもいない、ということになり...