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昼寝が認知症予防に!?脳のグリンパティック・システムとは

睡眠と健康~その驚きの影響(3)グリンパティック・システムと脳の健康脳

西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
概要・テキスト
『スタンフォード大学西野教授が教える間違いだらけの睡眠常識』(西野精治著、PHP文庫)
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近年の研究では睡眠に「脳の老廃物を除去する」働きがあることが分かってきた。脳に老廃物が溜まると、それが脳の神経組織に障害を与え、認知症(アルツハイマー)を発症するのだという。今回は、そうした「グリンパティック・システム」といわれる脳の機序、昼寝の役割、そして人間の記憶に関して睡眠が果たしている効果について解説する。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16:06
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/19
カテゴリー:
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≪全文≫

●脳を使えば使うほど「老廃物」が溜まる


―― 続きまして、先ほどおっしゃった「睡眠が脳の老廃物を除去する役割を担っている」という「グリンパティック・システム」のお話を伺いたいと思います。このことについては以前のテンミニッツTVでもお話をいただきましたが、あらためてお話をお伺いしたいと思います。

 そもそも脳の老廃物とはどういうものなのですか。

西野 体の酸素消費量を見ていただくと分かりますが、体の臓器の中でも脳は非常に代謝の盛んな臓器です。だから、使えば使うほど老廃物が溜まる。その老廃物とはいったい何か。

 例えば、脳の中にはいろいろなタンパク質があります。そういったものは、使い終われば新しいものに置き換わっていかなければいけない。分かりやすい例からいえば、「アミロイドβ」というタンパクの短い断片があります。この「アミロイドβペプチド」が脳の中に蓄積すれば、認知症、アルツハイマー病の原因になる。もう1つ、アミロイドだけでなく「Tau(タウ)」という、神経細胞の中の軸索という神経伝達の重要な部分にあるタンパク質も脳に蓄積する。異常に蓄積したら神経細胞に障害を引き起こすのです。

 それらは悪者なのか。アミロイドもタウも、通常は脳の神経機能を正常に支えています。アミロイドの場合、アミロイド前駆体という、アミロイドの元になるタンパク質があり、それは細胞の表面にあって細胞の修復などをしています。使い終わったら短く断片化され、排泄されていく。

 排泄がうまくいっていればいいのですが、中には凝集しやすいものがある。アミロイドβの長さによっても変わってくる。バランスよく排泄されないと溜まってくるわけです。アミロイドの場合は細胞外に溜まるのですが、タウの場合には細胞内に溜まり、神経細胞を障害していくのです。

 きちんとバランスよく、正常な状態で排泄していけばいいのですが、いろいろな遺伝的な要因や生活習慣によって、それが妨げられるのです。


●睡眠中に脳の老廃物が洗い流されていく


西野 そういった脳の老廃物がどのように排泄されるかについては、長らく分かっていませんでした。例えば、末梢ではリンパシステムがあります。リンパは免疫にも関与しているのですが、老廃物を静脈からリンパに流し、そこで処理する。ところが、脳にはリンパがない。しかし、タンパクは新しいものに置き換わらなけれ...
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