●元気な高齢者を労働力に組み込む
森田 次は労働力の不足です。労働力の場合、先ほどいいましたように、生産年齢人口が減ってきている。生産年齢人口がわが国の産業や社会を支えていたものですから、それが崩れてくるのでどうしましょうということです。
最初に考えられたのは、まだ労働に従事していない潜在的な労働力を発掘しようではないかということ。女性の場合、「M字カーブ」(※女性の年齢層別の労働率グラフにおいて、結婚・出産を機にいったん離職し、育児が一段落したら働き出すことが示された曲線)などといわれていましたが、数の点でいうと、現在すでにかなりの女性は就労しています。ただ男性との賃金格差の問題があり、これは是正すべきだと思いますが、そこを改めたからといって女性の労働力が急に増えることはないと思います。すでにかなり増えてきているので。
そうすると、あとは何が使えるかといったら(「使えるか」といういい方は大変問題あるかもしれませんが)、元気なお年寄りでしょう。私も70代ですけれど、元気な高齢者に働いてもらうのがいいのではないか。実際今、かなりの高齢者が就労しています。
(2024年の)都知事選では、あまりいわれなかったのは、普通、選挙のときには高齢者に対する社会保障をどうするか、高齢者福祉をどうするかという点が大きな話題になるのですが、ほとんど争点になっていなかった。1つの理由は、実際に社会保険料の納付額は増えているからです。これは高齢者の方が働いてお給料をもらい、保険料も払っているということです。そういう意味でいうと、高齢者の方にもう少し、生き甲斐として仕事に就いていただく。高齢者を社会で活用していくことが重要ではないかと思います。
そのためには日本の終身雇用の仕組みそのものをもう一度見直さなければいけないなど、いろいろと課題はあります。逆にいうと、若い人たちがとにかく今、きつい仕事はなかなか働いてくれないし、せっかく就職してもすぐ辞めてしまうことが大きな問題になっています。終身雇用のときはとにかく「雇っていただく」わけだし、企業側から見ると「雇ってやる」だったのですが、今は「働いてやる」「働いていただく」という具合に、明らかに売り手と買い手のスタンスが変わってきた。その中で労働市場の混乱がずいぶん起こっています。
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