教養としての「人口減少問題と社会保障」
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高福祉国家フィンランドでも…世界的に進む人口減少の実態
教養としての「人口減少問題と社会保障」(3)なぜ少子化は止められないのか
政治と経済
森田朗(一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事/東京大学名誉教授)
なぜ人口減少は止まらないのか。日本の場合、合計特殊出生率の低下に加え、20~30代の女性の数自体が大幅に減っているという現状がある。さらにこの人口減少は日本だけの傾向にとどまらず、世界的にも問題となっている。それは高福祉国家フィンランドも例外ではない。いったいどういうことなのか。世界が注目するフィンランドの子育て支援制度「ネウボラ」の現状なども取り上げながら、この問題についてデータから読み解く。(2024年7月13日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分35秒
収録日:2024年7月13日
追加日:2024年11月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●20~30代女性の数自体が少ないということ


森田 次にその(人口減少の)メカニズムについて触れさせていただきます。

 グラフが二重になっています。影の部分が2010年の人口ピラミッドで、青色の部分が2060年の人口ピラミッドになります。右下のピンクの部分が、20代、30代の女性です。生まれてくる赤ちゃんの95パーセント以上が、この世代の女性から生まれてきます。女性全体の数はとても多いのですが、出生率(少子化)に関わるのは、その時代の20~30代の女性がどれほど(なかなか言い方が難しいのですが)頑張ってくださるかに関わってくるということになります。

 ここで、1人の女性が生涯に産む子どもの数「合計特殊出生率」が非常に問題になっています。日本は一時1.26まで下がり、それが1.4ほどに上がりましたが、コロナ禍でまた1.2台に落ちました。特に東京では、1を切って0.99になったということが非常に話題になりました。

 これは1人の女性が生涯に産む子どもの数ですが、そもそもこの世代の女性の数自体が減っていることが非常に問題です。グラフを見ても分かる通り、2010年から2060年にかけて半分以下、46パーセントほどまで減っているわけです。したがって、この世代の女性の数がどうしても減る以上は、多少、合計特殊出生率を上げたとしても当然、人口が減っていきます。

 ちなみに合計特殊出生率は、現在は1.4や1.2などといっていますが、親の世代と同じ人口の規模を維持するためには1人の女性が生涯に平均2.07人の赤ちゃんを産まなければいけないといわれています。「.07」の半端な数についてよく訊かれます。本来ならば2でいいはずですが、20歳になる前に亡くなる女性の方が一定数いらっしゃるので、それを補正すると「2.07」になります。


●地域ごとの「出生率」を見ても意味がない


―― 今のお話からすると、少子化を止めるのは非常に難しいということですが、それでもなお手を打つとすると、どういった手が考えられるのですか。

森田 ですから、まず出生率を上げるためにどうするか。これが、なかなか難しいところです。今行われている少子化対策は正直申し上げて、ほとんど効果がない気がします。

―― なぜ効果がないのですか。

森田 児童手当にしても、生まれてきた後の子どもたちに対してどういった手当をするかということがベ...

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