人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
人新世はいつ始まったのか、3つのグラフが示す衝撃的事実
人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡(2)人新世の始まり
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
人新世がいつ始まったのかについては議論が分かれる。農耕革命を始まりとする説もあれば、1960年代と指摘する説もある。今回は、2020年に発表された論文で人新世開始時期の痕跡を示した3つのグラフを通して、人新世のスタート地点に迫っていく。(全3話中第2話)
時間:6分10秒
収録日:2021年4月19日
追加日:2021年6月27日
≪全文≫

●人新世のスタート地点を探る研究


 前回お話ししたように、人新世を最初に提唱したのはパウル・クルッツェンたちでした。では、地質学的に見て、「本当にここから先は違うよね」と明らかに言えるのかどうか。その明確な痕跡を見いだすことはできるのか、という研究がたくさんなされています。

 その中で、2020年に発表された「ネイチャーコミュニケーションズ」の「アース&エンバイロメント(Earth & Environment)」に掲載された論文を少し紹介したいと思います。この分野の研究は他にもいくつもあるのですけれども、シヴィツキーという人たちが研究した内容についてです。

 彼らによると、11700年前に始まった完新世は、3つに分かれているといいます。「グリーンランディアン」「ノースグリッピアン」「メガーラーヤン」とあります。メガーラーヤン(あるいはメーガーラヤン)というのが4300年前から始まって現在までなのですが、このあたりから文明が起こり、都市ができ、工業化が起こったということなので、ここをもっとよく見てみよう、ということです。

 彼らは1670年から1850年の年代を、「工業化・産業化が始まる前のあけぼの」としています。1850年から1950年の百年間は工業化・産業化進行中の時代。そして、それ以降というふうに分けて、いろいろ詳しく見ていったわけです。


●文明による痕跡を示す3つのグラフ


 彼らの論文の中には、非常に衝撃的な図がたくさんあるのですが、ここに3つ挙げました。横軸は全部0が現在(2020年)で、今からさかのぼること何年という尺度で、100年前、200年前、300年前という具合に刻み、12000年前まで取ってあります。

 最初のグラフは「地球全体の人口」、次が「地球の総エネルギー消費量(年当たり)」、最後が「地球全体のGDP(一人当たり、年当たり)」です。それを12000年前から現在までというのでプロットしてみたときに、1850年を示すのが紫色の丸です。ずっと何も増えないで平らに続いてきた最後のあたりですね。

 青い四角が1950年。これはちょっと上がっています。ところが、そこから先が爆発的で、今までほとんど増えなかったのが急激に増えています。地球の人口もこのように増えていて、現在は80億人近くになっています。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎