●プラチナ社会へのキーワードとビジョン
今日は、プラチナ社会というコンセプトについてお話します。
内容は大きく3つあります。1つ目は、人類史の転換期に生きているということです。キーワードは「飽和」と「スピード」、すなわち変化のスピードが速いという、この2つです。
2つ目は、プラチナ社会というビジョン、その提案です。プラチナ社会実現の希望は間違いなくあると思います。課題先進国ということで、課題を解決すれば世界の先進国としてリードできるという希望はあるのですが、日本はなかなか動きません。ここが最大の問題です。
3つ目は、それでも動いていかなければならないので、プラチナ構想を社会実装するという話です。それが新しいビジネスの機会になるはずだと確信しているからです。この順番にお話しします。
●人口の飽和と先進国の課題
グラフは横軸が1,000年を表していて、20世紀に入ったのが右から1センチほどのところです。20世紀に入ってから急激に活動の膨張が起こっています。世界平均の1人当たりのGDPが7倍に増えています。それから、世界の平均寿命ですが、1900年の頃は31歳でした。とても短命だったのですが、今の世界平均が72歳です。ですから、日本で高齢化が大変だと言っていますが、長寿化は世界的なことです。
もう1つ重要なのが人口です。20世紀の入り口の頃は16億人でした。今は76億人まで達していて、約5倍に増えました。この後はこんなには増えていかず、96億人ほどでピークになり、その後は下がっていくともいわれています。この意味でも、日本は課題先進国といえるのです。
20世紀以降の変化としてもう1つ重要なのが、二酸化炭素の大気中濃度です。産業革命のおかげで物質的に非常に豊かになり、長生きもできるようになり、人口が増えて、結局、地球を変え始めたというのが今です。このスピードは非常に速く、1世紀の間にここまで来てしまったわけです。そこから取り残されているのはアフリカやインドなどで、それを一人も取り残すことなくトップに引き上げることを目指すのが「SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」です。言い方を変えると、地球と人権、これがSDGsの基本軸です。
ですから、例えばSDGsの中には、エイジングという高齢化社会に関する話は入ってきません。それから、地域の過疎といった問題も入ってきません。それは、日本にとって重要な問題で先進国共通でもあり、途上国もすぐそうなることは目に見えているのですが、SDGsには人類がこの先どこを目指すのかという問題は入っていないのです。そこで、未来に向けて、こういった問題に取り組もう、つまり課題先進国を課題解決先進国にしようという姿がプラチナ社会ということになります。
●人口の飽和におけるビジネスモデルの転換
今申し上げたのは20世紀の膨張によって起こった飽和ということです。そして、1人当たり持っている人工物が飽和しているということを自動車で示したのが以下の図です。右側の2列目にある0.45や0.5という数字が、走っている車の数を人口で割った値です。ですから、0.5というのは2人に1台が車を持っているという状態のことです。
先進国はどこも皆そこまでいって止まります。日本の車はもう増えないでしょう。今約6,000万台が走っていますが、新車は約500万台売れる一方で、約500万台廃車になり、これで一定ということですから、売り上げは飽和です。これが要するに、先進国の経済が低成長化するという本質的な背景なのです。
この後、車の数は減るでしょう。アメリカを見ているとよく分かります。アメリカでは、もう車の数が急速に減ってきています。これは、「シェアリングエコノミー」といって、若い人が車を買わないことが理由です。ですから、車のビジネスも製造者は安泰ではないのです。そこで、トヨタもソフトバンクと組むといった動きが出てくるわけです。
●プラチナ社会は地球が持続し、豊かで、人の自己実現を可能にする
すでに車を欲しい人は持っています。そこで、若い人に何が欲しいかをと聞くとしましょう。私たちが学生の頃は車が欲しかったわけです。車を買うと素敵な女性が乗ってくれるという幻想があったので欲しかったのです。しかし、今そのようなことを考えている若い人はほとんどいません。
では何が欲しいかというと、やはり生活の質(quality of life)における豊かさや自己実現です。高齢者まで含めて、そのことが目標になってきています。温暖化はどうしようもなくなってきていると皆、感じていますので、そういった地球の問題を解決し、豊かで、人の自己実現を可能にする社会を目指さなければなりません。それを「プラチナ社会...