●企業を巻き込んで公害を克服した
エコロジーの話を最初にします。皆さん、ご存じないかもしれないですが、半世紀前は日本も左の写真のようでした。左上が北九州の空で、左下が北九州の洞海湾です。それが、右の写真のようにきれいになって、船のスクリューが筋状に溶けたという逸話のある洞海湾に、今は11種類の魚が戻り、美しい海を取り戻したのです。われわれは右の写真のようなところに住みたいのです。
次に、これは静岡県三島市で、東京駅から新幹線で40分の三島駅から徒歩10分ぐらいの三島の真ん中です。そこで、2016年か2017年に左下の写真のようなホタルの群舞を見てきましたが、本当に美しかった。それは、昔は当たり前でした。この左上の写真は同じ場所です。半世紀ほど前には豊かな水が流れていて、お母さんがかっぽう着を着て川で洗濯です。そして、横で子どもが遊んでいるというように、経済的には貧しいけれども、ある種の精神的な豊かさがあっただろうと思います。それが20~30年の間に、右の写真のように汚れてよどんだドブになってしまったのです。
これは、企業がすさまじい勢いで地下水を工業用水としてくみ上げたことによって、この写真の場所に流れてくる水量を減らしてしまったことが原因です。そこに生活排水を垂れ流したので、あの美しい豊かな川が汚れてよどんだ川になってしまったのです。
これは嫌だというので、渡辺豊博さんという1人の元県庁職員で、今は都留文科大学の特任教授をされている方がどぶさらいを1人でスタートしました。そこにNPOが追随し、企業も応えました。処理した工業用水を上流に戻したのです。
●プラチナ社会における観光業
これはエコロジーの話でしたが、その後、25年間で観光客が4倍に増えました。今、この左下の写真のような遊歩道の総延長が三島では52キロあります。他には、うなぎを特産にするなどさまざまなことをやっています。結果的に観光客が4倍に増えました。三島にはシャッター街はなく、空き店舗が消えたという状況が続いております。
つまり、観光というのはプラチナ産業として今後も非常に有力な産業です。豊かになって時間ができれば旅をするようになるのです。ですから、インバウンド(Inbound「訪日外国人旅行」)対策で旅行者をどのように呼び込むかなどと言われていますが、呼ばなくてもやってきます。アジアの豊かな層は急速に育っているので、観光客は4,000万人にも5,000万人にもなると思います。ですから、観光を「爆買い」とは別に、いい形にしていく、ということはこれから非常に重要なテーマです。
●日本の林業の問題点
今のは少しずつ良くなっているという話でしたが、どうしようもないのが山です。ここに一つ大きなビジネスの話が生まれつつあります。日本は戦後、木が不足した時に焼け野原を今の都市に戻すために木を切ってしまって山を丸裸にしました。その後、植林として杉の木を植えました。
他の木を植えてくれていればわれわれは今のようなアレルギーにならずに済んだでしょうが、杉を植えた後、今までそれをほったらかしにしているというのがさまざまな問題の原因なのです。
密林化してしまったのです。そもそも杉は根が浅いのですが、密林の杉ですからもう鉛筆のように細い木になり、非常に脆弱な土壌になって、どしゃっと崩れているというのが左側の図です。
ただ、答えはあります。近代林業をやれば、5兆円の産業で50万人の雇用が地域に生まれます。そして、国土も強靭化し、自然共生社会が実現します。林業が生まれればロジスティクス(物流管理の最適化)が入るので、過疎に関してそんなに恐れることはありません。国土の3分の2を森林が占めるので、何とか林業をやらなければならないということです。
皆さんの中には、日本は斜面が急なので林業には向かない、と思っておられる方が多いのではないでしょうか。それは間違いです。スウェーデンに行くと斜度25度ぐらいまで林業をやっています。そして、先進国のうちで材木を輸入に頼っているというのは日本とイギリスだけです。他の先進国はいずれも自給化しています。ニュージーランドは輸出国なのですが、機械を開発して斜度45度まで林業を行っています。
ですから、まともにやれば日本の林業はいくらでもやれるのです。そのためには近代化が必要です。
●近代林業の形
近代化の形は、こういうことです。年間100万立方メートルの丸太を切り、それを大きな工場で処理します。(丸太は)1立方メートル1万円ですから、(100万立方メートルで)大体100億円になります。そして、そこから材木...