●プラチナ社会が求める自己実現を参加型社会で果たす
これまで申し上げたのが、プラチナ社会の一つの条件である自然共生社会という話です。これはエコロジーというだけではなく、一次産業の復活を意味します。農業でも耕作放棄地が滋賀県の面積を超えていますので、目指すのは農林水産業の復活です。それから観光産業の活性化です。
今は一次産業といっても林業ですらITと機械の時代です。したがって、目指すのは、若者はもちろんですが、女性やシニアも働けるような職場です。以上からプラチナ社会が求める自己実現を参加型社会で果たすところに向かうことができると考えます。
●資源が飽和して鉱山が廃坑する
次が物質の話です。先ほど自動車の飽和の例を申し上げましたが、例えば日本では鉄が飽和しております。つまり金属がすでに飽和しているということです。答えからいうと、2050年あるいは遅くとも今世紀の末までに、いわゆる鉄鉱山や銅の鉱山は、ほとんど全てが廃坑になると思います。理由は画像の左上の赤い線です。
赤い線は日本にある(地上資源としての)鉄の量を示しています。鉄の量とは何かというと、自動車に含まれる鉄やビルに入っている鉄といった、使用されている鉄を足したもののことです。1950~1960年の頃は、日本に鉄がありませんでした。この頃は自動車も多く走っていなかったし、ビルの数も少なかったのですが、それが高度成長期に一気に増えて、今は鉄の総量が飽和したのです。
自動車の数も、トラックの数も、ビルの数も、すでにほとんどが飽和しています。ですから新しいものをつくるとき、前のビルを壊さなければなりません。このとき、鉄鉱石は必要ありません。鉄は一回できると捨てるものではないからです。自動車が海に捨ててあることは、あんまり見たことがないと思います。鉄は全て溶かして、もう一回使っているのです。ということは、年間500万台の車をつくるけれども、年間500万台が廃車になるのですからその鉄が使われているというわけです。
レアアースも同様です。レアアースは良い磁石をつくるのに必要で、自動車にはモーターに非常に多くの磁石が入っているわけです。自動車の中古がアジアに行ってしまうとその後どうなってしまうのかが分からない面がありますが、日本で回収された車であれば、その中の磁石は全て回収しています。ですから、輸出入を考えず日本だけでいえば、鉄鉱石は要らないのです。レアアースももうほとんど必要ありません。先進国はほぼ日本と同じような状況です。
●2050年までに世界から鉱山がなくなる
では途上国はいつごろそのようになるのでしょうか。日本は今、赤い線が14億トンですから、人口1人当たりにすると11トンになります。中国も人口1人当たりがすでに2年前に9トンを超えて、今では10トンに近いです。北京や上海、寧波を見ても、もう飽和しているではないですか。
これは先進国と同じです。奥の方にはまだ飽和していない場所があるけれども、中国は2020年には日本の人口1人当たり11トンを超えるのです。ですから、中国にとって一帯一路という話は、こういった面から考えてもやらざるを得ないのです。
それでは、世界で飽和するのがいつになるかというと2050年です。2050年はもうすぐという気もします。その頃、世界の鉱山は廃山します。日本にとってこんないい話はないと思います。地上資源を回せばいいのですから。この周辺にはものすごいビジネスが生まれます。小さな家電をうまく回収するとか、そこから分離するとかいった、さまざまなビジネスが出てくるでしょう。
●エネルギー消費量も減っていく
ではエネルギーはどうでしょうか。自動車やビルといったものが飽和していて、つくり替えると、そのエネルギー効率が良くなります。500万台の車が新車で、同数が廃車になりますが、廃車と新車では燃費が倍近く違うこともあります。ですから、車の毎年のエネルギー消費量は減っているわけです。
日本全体としてどうなるかというと、以下のグラフは横軸が50年で、黒線と赤線は1973年時の数値を1とした場合のそれぞれ実質GDPとエネルギー消費を示しています。現在ではエネルギー消費は毎年1.6パーセントで減っています。
これが先ほど申し上げた、自動車の数は飽和していて車が置き換わると燃費が良くなるという話で、ビルも同様です。JXホールディングス株式会社(現JXTGホールディングス株式会社)が新しいビルに移り、エネルギー消費が60パーセント減ったそうです。快適になってエネルギー消費が減ったということです。実質GDPに関しては、リーマン・ショッ...