教養としての「人口減少問題と社会保障」
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題
教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担
森田朗(一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事/東京大学名誉教授)
人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行政の給付を受けているかなどのデータを通して、日本において人口減少がどれほど国家財政を悪化させているのか、その現状を解説する。(2024年7月13日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第4話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分32秒
収録日:2024年7月13日
追加日:2024年11月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本の国家財政収支は「ワニの口」


森田 ただ、これ(高齢社会)を支えるのがいかに大変かということを、次にお話しします。主として財政(お金)の話になります。

 この図をどこかでご覧になった方もいらっしゃるかと思います。これはわが国の一般会計(当初予算)の、税収と歳出を表したものです。

 上側の黒い線が歳出です。下の青い線が税収になります。バブルの弾ける1990年ごろまでは支出のほうが少し多く、借金はしていたのですが、税収と歳出の幅があまり拡大していません。パラレルに成長していったわけです。もちろん景気の上下がありますから、景気が悪いときには少し借金が増えていますが、景気が良くなったら借金を返すという形で健全な財政運営をしていたわけです。

 けれど、1990年にバブル経済が弾けた後は、簡単には経済成長が戻りませんでした。そのため税収は減るのですが、他方、社会的には失業問題その他、むしろ景気を浮揚させるために次々とお金が使われました。さらにいうと、2000年ごろになってくると高齢者のための社会保障の支出が増えてきました。結果として、税収と歳出の間隔が徐々に離れていったわけです。

 税収と歳出のグラフがギザギザしながら徐々に開いていく様を形容して「ワニの口」という言い方をしていました。日本の財政は「ワニの口」のように、凸凹しながら、先へ行くほど開いていく。この差額を借金で埋めています。下のほうの赤い棒グラフは、その年の借金です。これが積み重なっているということになります。

 棒グラフがゼロ以下になると借金を返すことになるのですが、全然返していない。「ワニの口」と呼ぶのも「なるほど」と思ったものです。

 2020年に新型コロナウイルス感染症拡大への対応で爆発的に歳出が増えています。高いワクチンを国民に打つために買うとか、それは医療のためにあるとか、あるいは経済が停滞したので、それを補助金で支える、などです。その結果、急激に(借金が)増えてきました。

 そして現在、国の一般会計の当初予算が110兆円ほどですから、1年分の歳出に匹敵するような支出をほぼ借金で賄うということをしてしまったのです。

 次は、同じグラフなのですが、一般会計の当初予算に補正予算を加えた図になっています。点線が当...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎