高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
年金制度における最大の欠陥は賦課方式にある
高齢化と財政危機~その解決策とは(13)年金支給開始年齢と賦課方式
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏によれば、年金の支給開始年齢の引き上げと積立方式への移行は、年金改革にとって非常に有効な政策である。しかし、そこには大きな問題があるという。はたしてそれは何か。島田氏がその政策と実際について解説する。(全24話中第13話)
時間:10分16秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年12月2日
≪全文≫

●先進諸国は支給開始年齢を67、8歳に引き上げている


 年金改革の第3の論点は、支給開始年齢の引き上げです。現在、日本では支給開始年齢を65歳に、先進諸国は67、8歳に引き上げようとしています。イギリスでは、2024年から46年とすごく長い期間にかけて、68歳になる予定です。フランスは2018年までに67歳、ドイツは2029年までに67歳、アメリカは2027年までに67歳、デンマークは69歳ということを検討中です。それに対して、日本では2025年に65歳になる予定であり、先進諸国に比べてかなり出遅れています。

 支給開始年齢の引き上げは、受給者が大反対する改革です。そこで、もうすぐ退職する世代が反対しないように、改革法案が通っても、実施までに10年ぐらい間を空けるのが普通です。例えば、アメリカでは、65~67歳に引き上げる際に、決定から実施まで20年もかけることにしています。退職年齢層の人を対象外にするようにしないと、彼らの強烈な反対で頓挫するのです。イギリスでも、引き上げるのに17年かけています。

 日本では、定額部分と報酬比例分を合わせた年金受給年齢が65歳に完全に引き上げられるのが、2025年です。今後、67、8歳に引き上げるための議論が必要になるでしょう。財政検証は5年ごとに行われますが、次回は2019年です。この機会を逃すべきではないでしょう。高齢者の雇用機会を増やすという構造改革を一方で強力に進めながら、年金制度の長期的な持続性確保のために、できる限り早く、さらなる支給年齢の引き上げに着手すべきです。2019年までに世論を醸成しておいて、一気に取り組む必要があります。それでも実現するのは20~30年先になるでしょうが、とにかく進めるべきだと思います。


●賦課方式は世代間の収支に、非常に大きな格差を発生させる


 第4の論点は、積立方式への移行です。これは根本的な改革になるでしょう。高齢化にともなって社会保障給付が増加していますが、事態を悪化させている最大の制度的な欠陥は、賦課方式です。

 高齢化の過程で、受給世代の人口が増えていきますが、社会保障を負担する現役勤労世代の負担能力には限界があり、また、現役世代の人口も縮小しています。不足分は国債発行によって賄うことになっているのですが、これはまだ生まれてもいない世代に負担を賦課することに他なりません。しかしこれは、社会保障制度に関わる世代間の収支に、非常に大き...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建