高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
保険料率の引き上げは限界に達している
高齢化と財政危機~その解決策とは(12)保険料率の引き上げと給付削減
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、歳出削減の本丸である年金改革について解説する。保険料率の引き上げは有効な手段だが、すでに限界に達している。他方、給付額の削減はなお有効だ。マクロ経済スライドをデフレ下でも実施できるよう、改革する必要がある。(全24話中第12話)
時間:8分28秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年11月26日
≪全文≫

●保険料率の引き上げは限界に達している


 歳出削減の最大の柱は、社会保障をどこまで改革できるかにかかっています。額がものすごく大きいですから。社会保障制度の改革について主な意見を拾いながら、考え方を整理していきたいと思います。ただし、社会保障は額を減らせばいいという問題ではありません。社会保障はやはり、一般国民あるいは勤労者の生活にもろに関わっています。したがって、質的な改革が必要になります。

 最大の問題は年金改革です。第1の要点は、保険料の引き上げです。保険料率の引き上げは、財政赤字累積のほとんどが社会保障給付の増大によるようになった1990年代以降、財政赤字増大を抑制する手段として、大変有力な選択肢と見なされてきました。実際、政府は保険料率を引き上げ続けてきました。しかし、政府は国民に対して、2004年の改正で、2017年度までに18.3パーセントへと引き上げれば、それ以上は引き上げないという約束をしました。

 18.3パーセント以上に引き上げるなら、2004年の公約を破ることになります。国民は公約のために存在しているわけではないですから、国民のためになることであれば、公約はいくら破ってもいいと私は思います。しかし、実際には、これ以上に引き上げると、現役世代の負担をさらに高めてしまうことになるのです。

 つまり、保険料率の引き上げによって勤労意欲が減退すれば、現役世代、将来世代の負担が増えるのです。今給付を受けている受給世代の負担は高まることはないのですから、世代間格差が非常に拡大していくでしょう。したがって、保険料率の引き上げは限界に達していると思います。


●マクロ経済スライドは、一度も適用されていない


 年金改革の論点として、第2に給付の削減があります。2004年の大改革で、「マクロ経済スライド」という制度が導入されました。経済が成長しようがしまいが、毎年、年金給付額を0.9パーセントずつ引き下げていくという制度です。これは法律で通っています。その根拠は、公的年金の被保険者の減少です。長期推計によれば、人口が毎年0.6パーセント減っていくのに対して、平均寿命の伸び率は、平均0.3パーセント増えていくということです。これに合わせて0.9パーセントずつ給付を減らしていけば、マクロ経済変動とは別に、構造変化に対する対応ができるというわけです。

 この制度を適用していけば、22、3年...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ