高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本が取り組むべき最大の政策は消費税の引き上げだ
高齢化と財政危機~その解決策とは(18)長期的で小刻みな消費増税
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏によれば、今取り組むべき最大の政策は消費税の引き上げである。確かに増税による消費の冷え込みは懸念事項だが、長期的に小刻みに増税をしていけば、増税ショックを緩和できる。少なくとも20パーセント以上の消費税率がなければ、財政再建は不可能だ。(全24話中第18話)
時間:12分02秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年12月14日
≪全文≫

●失われた20年、社会保険料は減少傾向にあった


 さて、いよいよ、これまでずっと考えてきた問題を総括し、この国をどうすればいいのか総合的に考えていく段階に来ました。これまで学んできたことを一瞥しておきましょう。高齢化が進むとともに、日本は財政危機に直面します。1990年代の初めまでは、日本の財政は国際的にも最優等生でした。ヨーロッパ諸国よりもはるかに財政状況は良かったのです。ところが、1990年代中盤から急速に悪化し、2000年代に入ると日本は世界でも突出して最悪の状態になりました。

 そこには2つの大きな要因があります。第1に、この時期は失われた20年といわれました。ほとんど経済が成長しない長期停滞であり、しかもデフレです。賃金は上昇せず、むしろ名目賃金が下がりました。社会保険料は賃金と連動していますから、社会保険料も増えず、むしろ減少傾向です。


●90年代には、社会保障費を国債に依存するようになった


 第2に、急速な高齢化です。医療・介護費や年金といった社会保障給付費が、当然急速に増大します。それを賄うために、賦課方式によって、将来世代の負担を増やしてきました。

 日本の年金はもともと積立方式でしたが、70年代に修正賦課方式になり、73年には田中角栄内閣の下、「福祉元年」と称して、給付額がかなり引き上げられました。田中総理は経済成長を優先し、社会保険の拠出額の引き上げを後回しにしていましたが、翌年から日本経済はオイルショックで急転、拠出増大を訴えることもできなくなったのです。そのため、社会保障の給付と拠出の開きが「ワニの口」のように、開いていったのです。

 80年代になると、賦課方式が本格化し、積み立て分はどんどん少なくなってきます。さらに90年代になると、社会保障費を国債に依存する以外に方法がなくなりました。政府は最初から国債発行を見込んで予算を作るようになります。90年代後半にはついに、予算の作成の際、いきなり国債を40兆円も発行するという、異常な事態に陥りました。これが財政危機をどんどん深めてきたのです。


●危機的な状況を克服するには、3つの基本的な方式がある


 こうした危機的な状況を克服するには、3つの基本的な方式がありました。第1に増税、第2に歳出改革、第3に経済成長です。

 第1の増税については、安倍晋三内閣は消費増税を2度にわたって、4年間も延期しました。経...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦