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日本の将来のために増税の是非を本気で考えるべき

高齢化と財政危機~その解決策とは(10)異次元金融緩和と消費増税

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、債務累積問題の解消に向けて、日本が取るべき方策を検討する。異次元金融緩和は、すでに出口戦略を模索すべき時期に達している。消費税増税も2019年に延期されてしまったが、増税を延期しても経済に良い影響をもたらす保証はない。長期にわたる小刻みな増税を検討するべきだ。(全24話中第10話)
時間:13:57
収録日:2017/10/05
追加日:2017/11/24
≪全文≫

●債務の累積は財政破綻を引き起こしかねない


 これまで、日本の深刻な政府債務の累積問題を、その内容や制度、構造、歴史にわたって見てきました。債務の累積は、財政危機だけでなく財政破綻をも引き起こしかねません。こうしたリスクをどのように回避するべきか、そしてこの重大な問題をどう克服すべきか、これから考えていきましょう。

 まず金融、財政、そして成長戦略について見た後、社会保障を構成する年金・医療・介護の分野について、何をすべきかということを考えたいと思います。そして最後に、財政危機から財政破綻に陥りかねないというリスクを回避・克服するために、今取り組むべき最も重要な政策について提案します。現在、歴史的に大きく転換しつつあるこの国を、将来に向けて持続可能な社会にするには、何をすべきなのでしょうか。


●日銀は異次元緩和を脱却して、適切な出口戦略を採用すべき


 まず金融の問題です。異次元金融緩和という政策が、アベノミクスの一環として提議され、黒田東彦日銀総裁によって推進されてきました。2014年10月以降には、毎年80兆円ペースで国債を購入して、ベースマネーの供給を増やすという方針になっています。ベースマネーを増やすということは、日銀が民間金融機関に国債の代金を支払うということです。しかし、その代金の多くは日銀の当座預金に積み立てられています。その結果、2017年7月時点での日銀の資産は、505兆円という、ほとんどGDPに匹敵する額になってしまいました。そのうち、いわゆるマネタリーベース、ベースマネーの蓄積は470兆円に上っています。

 こうしたマネタリーベースの急速な累積が今後も継続された場合、国債の発行残高の全てを日銀が吸収してしまうという、異例の事態になりかねません。そうなれば、国債市場は機能不全に陥る危険があります。そうした事態に陥る前に、日銀は異次元金融緩和を脱却して、膨れ上がったマネタリーベース、すなわち日銀のバランスシートを、正常な姿に戻す出口戦略を採用する必要があるでしょう。


●出口戦略の実行はリスクを伴うが、不可能ではない


 ベースマネーの供給拡大の目的は、緩やかなインフレ基調を定着させて、消費や投資活動を活発化させ、経済を適切な成長軌道に乗せることにありました。これが実現すれば、もちろん日銀は異次元緩和の異常な状況を脱却して、適切な出口戦略を採用すべき...
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