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「国債村」の存在が財政危機の現実を覆い隠している

高齢化と財政危機~その解決策とは(8)財務省とプライマリーディーラー

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
2004年、国債の安定的消化のため、国債市場特別参加者制度、通称プライマリーディーラー制度が財務省によって導入された。財務省から重要情報を得る代わりに、「国債村」の企業は国債を買い続けている。これは財政危機の現実から国民の目をそらす制度だと、公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏は指摘する。(全24話中第8話)
時間:12:18
収録日:2017/09/27
追加日:2017/11/07
≪全文≫

●政治家は高齢者の利益に反する政策を立案することが困難だ


 財政破綻のリスクはどんどん高まっているのですが、政治家は国民の意向を忖度(そんたく)して政治をします。国民の支持のないことはできません。ですから、国民にも非常に大きな責任があると思うのです。

 そこで国民の理解に関して、2つのポイントを見ておきたいと思います。第1のポイントはシルバー民主主義です。高齢化社会では、高齢者層の比重が高くなります。その上、高齢者の投票率は高く、70パーセント近くもあります。それに対して、若年者は20~30パーセント程度しかありません。高い投票率を持つ高齢者層が、高齢化とともにどんどん比重を増していく、というのがシルバー民主主義です。高齢者層が望むのは、例えば年金の給付を増やすというように、自分たちの利益になることであって、先のことは知らないということになりがちです。

 こうしたシルバー民主主義の下では、政治家は高齢者の利益に反する政策を立案したり実施したりすることが、非常に難しくなります。したがって、財政破綻の危機が仮に迫っていても、政治家も政党も、いきおい高齢者の目前の利益を守る政策を取りがちです。これは世界に共通することですが、安倍晋三政権もこの傾向に忠実なのかもしれません。


●政治が財政問題に本気で取り組まないのは、民主主義の帰結か


 第2のポイントは、国民の合理的無知です。財政も社会保障も非常に複雑で、壮大な仕組みなので、投票者のほとんどは、その全体像を理解することができません。しかも、投票者はたった1票しか投票権を行使できません。たった1票の行使のために、そうした仕組みの全体像を理解するというのは、割に合わないでしょう。

 したがって、投票者は、税金や社会保障給付がどれだけ上がるのかという利害については大変敏感ですが、それがどういう意味を持つか、背景には何があるかといった、全体像を把握しているわけではありません。財政赤字がどんどん増えていくことに、漠たる不安を抱きつつも、それが一体どのようなメカニズムを通じて財政破綻に至るのかということは、全く分かっていないし、分かろうともしません。

 こうした、「分かろうとしない。だから分からない」というものを、合理的無知と呼びます。財政破綻と経済破綻は、システム全体の総合的機能不全ですから、投票者が全体像を理解していな...
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