高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
社会構造の変化を直視せねば日本で安心社会は構築できない
高齢化と財政危機~その解決策とは(19)戦後日本社会の大構造転換
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、戦後の日本社会に生じてきた大規模な社会構造の変化について解説する。社会保障給付費の増大と財政赤字の拡大の背景にある、大規模な社会構造の変化を直視しなければ、国民全体の安心社会を構築することはできない。(全24話中第19話)
時間:14分26秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年12月15日
≪全文≫

●近年の日本では、大規模な社会構造の変化が進展している


 前回では増税の話をしてきましたが、増税だけを掲げていても、国民はなかなか受け入れ難いでしょう。増税に見合う根本的な安心材料がなければ、増税は受け入れられません。税を取る以上は、国民全体の安心社会を構築する必要があります。それはどのような社会保障システムなのか、これは一番大きな問題ですので、一緒に考えていきましょう。

 まず認識すべきなのは、今の社会構造は、社会保障制度が構築された時代のものとは全く異なるものとなっているという点です。近年の日本では、大規模な社会構造の変化が進展してきています。今の社会保障制度は、そうした変化よりもはるか以前、1950年代から70年代の前半までの高度成長時代の経済環境、社会構造、そして雇用制度を前提に構築されています。


●高度成長時代に、年功賃金・終身雇用が定着した


 当時、人口構造は若く、しかも急速に増大していました。家族構造は、大半の家族が親と子の2世代家族であり、その多くに子どもが2人以上いました。これが標準家庭だと呼ばれていたのです。また、高度成長時代ですから、1950年代の後半から1970年代の前半にかけて20年間、日本経済は年率平均で実質10パーセント以上の成長を続けていました。

 人口が若く、しかも経済が持続的に成長するという期待がある中では、企業も当然それに沿った雇用をします。それが結果として、年功賃金・終身雇用という制度になったわけです。低賃金で多くの若年労働者を一括採用し、OJT(on the job training)と呼ばれる、企業内の職場での訓練を行いました。経験を積ませて、熟練工を育てることが目指されたのです。

 当然、生産性は上昇します。それに応じて、賃金率を定期的に引き上げる、定期昇給も行われました。経済が成長を続けているので、一度採用した労働者が解雇されることもありません。したがって、一度雇われれば、同じ会社に一生勤続するという考えもできてきました。雇用期間の定めなく雇われている労働者、いわゆる正社員の発想です。

 経済が成長していなかった時代には、雇用期間に定めのある臨時工はいましたが、今や経済はどんどん成長していきます。正社員化が加速し、臨時工は本当にわずかになりました。結果として、終身雇用と年功賃金という日本型雇用制度が定着したのです。

 こうした家族構...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦