高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
介護施設に流れる膨大な額の補助金、老老介護の現実
高齢化と財政危機~その解決策とは(17)介護をめぐるさまざまな課題
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、社会保障制度の問題点のうち、介護分野について解説する。介護士がどこまで介護をするべきかを決める権限の問題に始まり、介護施設に流れる膨大な補助金をめぐる争い、さらには老老介護の問題まで、効率的で安心な社会保障制度の構築には、課題が山積している。(全24話中第17話)
時間:9分42秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年12月13日
≪全文≫

●高齢化による費用を介護費用が上回っている可能性がある


 介護についても見ましょう。介護も現業サービスであり、医療と非常に共通性があります。2000年に介護保険制度が創設されました。急速な高齢化に対しておっとり刀でつくったのですが、もちろんこの制度の必要性を疑う余地はありません。ただし、高齢化に伴って介護需要がどんどん増えていき、コストも急増します。

 この図を見れば分かる通り、介護保険制度が2000年に導入されて以降、介護費は増加し続けてきました。特に2010年前後に急増しています。高齢化には波がありませんから、高齢化による費用を介護費用が上回っている可能性があるのです。

 これについて、日本経済新聞が大変参考になる記事をシリーズで出していますが、その中に次のような指摘がありました。介護士にご飯を作ってもらうことが是か非かという問題があります。自立するためにはなるべく自分でご飯を作った方がいいのですが、どうしても自分でご飯が作れない要介護者もいます。実際、介護士を家政婦代わりに利用することを認める自治体も増えてきています。しかし、介護士を家政婦代わりに利用しても良いのかどうか、自治体には実はコントロールする権限がありません。ケアマネジャーという国家資格を持った人が事業者と結託すると、何でもできてしまうのです。やはり介護保険制度は急速に拡大した制度なので、修正する点も多くあります。

 国民の負担能力には限界があるため、一定の制約の中で最大限の安心を提供するには、限られた資源をできるだけ効率的に、厳密に使う必要があるでしょう。


●膨大な公費が介護産業に消えている


 さらに介護施設にも問題があります。介護施設は、子育ての施設と同様、建設費として、国と地方から最低でも半分の補助金が支給されます。しかも、資金がほとんどないとか、人口が多いなど、さまざまな理由をつけて通れば、9割も補助金を得ることができる場合もあるのです。例えば、10億円の建物を建設するとなると、9億円が国と地方から支給されるということです。あるいは、運営費の7~8割も支給されます。

 例えば介護費は、標準的に月38万円程度かかります。これは介護施設の入所者にとって相当な負担であり、出費できる人は多くありません。要介護者は安定的な雇用がなく、健康を害して病気を患っている場合も多い。こうした人の年金額はも...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫