●高齢化による費用を介護費用が上回っている可能性がある
介護についても見ましょう。介護も現業サービスであり、医療と非常に共通性があります。2000年に介護保険制度が創設されました。急速な高齢化に対しておっとり刀でつくったのですが、もちろんこの制度の必要性を疑う余地はありません。ただし、高齢化に伴って介護需要がどんどん増えていき、コストも急増します。
この図を見れば分かる通り、介護保険制度が2000年に導入されて以降、介護費は増加し続けてきました。特に2010年前後に急増しています。高齢化には波がありませんから、高齢化による費用を介護費用が上回っている可能性があるのです。
これについて、日本経済新聞が大変参考になる記事をシリーズで出していますが、その中に次のような指摘がありました。介護士にご飯を作ってもらうことが是か非かという問題があります。自立するためにはなるべく自分でご飯を作った方がいいのですが、どうしても自分でご飯が作れない要介護者もいます。実際、介護士を家政婦代わりに利用することを認める自治体も増えてきています。しかし、介護士を家政婦代わりに利用しても良いのかどうか、自治体には実はコントロールする権限がありません。ケアマネジャーという国家資格を持った人が事業者と結託すると、何でもできてしまうのです。やはり介護保険制度は急速に拡大した制度なので、修正する点も多くあります。
国民の負担能力には限界があるため、一定の制約の中で最大限の安心を提供するには、限られた資源をできるだけ効率的に、厳密に使う必要があるでしょう。
●膨大な公費が介護産業に消えている
さらに介護施設にも問題があります。介護施設は、子育ての施設と同様、建設費として、国と地方から最低でも半分の補助金が支給されます。しかも、資金がほとんどないとか、人口が多いなど、さまざまな理由をつけて通れば、9割も補助金を得ることができる場合もあるのです。例えば、10億円の建物を建設するとなると、9億円が国と地方から支給されるということです。あるいは、運営費の7~8割も支給されます。
例えば介護費は、標準的に月38万円程度かかります。これは介護施設の入所者にとって相当な負担であり、出費できる人は多くありません。要介護者は安定的な雇用がなく、健康を害して病気を患っている場合も多い。こうした人の年金額はも...