高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
社会保障の負担を現役・将来世代に押し付けるべきではない
高齢化と財政危機~その解決策とは(21)「総合的社会政策」の費用
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、自身の提唱する新時代の「総合的社会政策」の費用について、見通しを語る。新しい時代の社会保障制度は、生まれてから死ぬまでの全方位を対象にしたものである。その費用は、消費増税によって、社会の全階層で平等に負うべきだ。(全24話中第21話)
時間:8分56秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年12月17日
≪全文≫

●寿命と健康寿命の間にはギャップがある


 高齢化の進展に応じて、定年制雇用の見直しも必要でしょう。日本企業はかなり厳格に定年制雇用を維持しており、正規の雇用期間が終了すれば、勤労者に勤労能力があっても活用されません。これは、国民経済にとって大変な損害です。

 日本は寿命が長い国だといわれますし、実際、世界のトップ集団に属しています。しかし問題は、寿命と健康寿命の間にギャップがあることです。2010年の簡易生命表(厚労省発表による)によれば、男性の寿命は79歳ですが、健康寿命は70歳です。つまり、10年間は人の世話にならないと生きていけないのです。女性の場合も寿命が86歳、健康寿命は73歳と、13年間、人の世話にならないと生きていけない状態です。

 この期間には介護費用だけでなく、ターミナルケアのような費用もかかります。「スパゲッティ症候群」と呼ばれるように、体中にパイプを指して点滴を行うなど、費用は莫大なものです。患者の苦しむ姿が見るに耐えず、生命装置を外すように家族は医者に頼みますが、医者はできません。もし医者が処置に及べば、裁判沙汰です。

 日本人は死生観がはっきりしていないのでしょう。人間は、人間らしい生き方をしているときに人間なのであって、心臓は動いているけれども意識がずっと止まっているという状態のときには、やはり別の考え方をしないといけません。国民全体としてこうした現状を理解しなければ、若い世代や将来世代に対して、ものすごい費用を押し付けることになります。


●大学は生涯教育の場へと生まれ変わる時期だ


 もちろん一番望ましいのは、健康寿命を高めていくことです。そのためには、一つは物理的な健康を促進する必要がありますが、もう一つは知力や好奇心を維持するということがあります。

 例えば、技術革新が進む中で、ICT革命も起きました。今ではスマホが使えない人は、生きていけない世の中です。スマホを使いこなせるお年寄りもいますが、大半の人は自分では使えないのも事実です。しかし、人生80年どころか90年という時代です。リンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏の共著による『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という本の中では、今のティーンエージャーは110歳ぐらいまで生きると言われています。そうなると、人生のうちで2、3回のモデルチェンジが必要になるでしょう。

 残念ながら、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留