高齢化と財政危機~その解決策とは
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破綻に向かっている日本経済の実情
高齢化と財政危機~その解決策とは(2)社会保障と財政、2つのワニの口
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

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一般政府総債務1,296兆円を抱え、財政赤字、GDP比債務残高、ともに主要国の中で最下位に位置する日本。その原因は、バブル崩壊後の失われた20年に広がった、社会保障と財政のメガトレンドにあった。しかし、公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏によれば、政府の財政再建目標到達への意欲は近年陰りを見せつつある。(全24話中第2話)
時間:14分06秒
収録日:2017年9月27日
追加日:2017年10月20日
≪全文≫

●太平洋戦争直後の政府債務残高よりも、現在の方がはるかに高い


 破綻に向かっている、日本経済の実情を直視することから始めましょう。いきなり深刻なデータを見ていただきます。現在の日本の政府債務残高のGDP比は、およそ229.6パーセントです。公的債務には色々な定義があり、これは少なめの数字になっています。これから皆さんと一緒に考えていく一般政府総債務は、およそ242パーセントあります。いずれにしても、大変高いところへ来ているわけです。

 1945年、太平洋戦争直後のGDP比での政府債務よりも、現在の方がはるかに高くなっています。当時は焼け野原で、統計がしっかりしておらず、およそ205パーセント程度だったといわれています。ところが今や、およそ242パーセントにまで膨れ上がってきました。

 戦前の時期を見れば、戦争するごとに債務残高GDP比が上がっているのが分かります。戦争のたびに、戦費調達で政府債務が増えるからです。日露戦争でどんと増えていますが、やはり一番大きかったのは太平洋戦争です。ここで急激に増えてしまいました。戦費の大半は、当然、国民から調達したものです。

 敗戦後の日本は、米軍の徹底的な爆撃のために、本土が完膚なきまでに破壊された状態でした。その状態の政府債務残高を上回る、今日の政府債務の大きさに注目する必要があります。


●一般政府総債務は1,296兆円、GDP比の243.7パーセント


 現在の日本経済は、世界第3位のGDPを誇っています。その分母に対して、政府債務残高が242パーセントにも及んでいるのです。この大きさは、大変深刻です。それだけの負債の返却はかなり困難ですし、市場が返済困難と判断すれば、公債価格は大きく下落するでしょう。しかも、そのリスクは極めて高いことが示唆されています。

 どのぐらいの債務なのか、その実態について、数字を実際に見てみると、2017年10月現在、政府が掌握している最新の数字は、2015年度末のものです。一般政府総債務は、1,296兆円あります。これは531兆円のGDPに対して、243.7パーセントに当たります。

 実は公的債務といっても、いろんな定義があります。主なものを挙げても3つあります。第1に一般政府総債務で、1,296兆円です。その内訳は、国債が850兆円、地方債務が222兆円、国庫短期証券が120兆円、借入金等が77兆円となっています。第2に、国と地方の長期債務残高で、1,093兆円で...

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