●日本は異常に森林が多いが、ほとんど活用されていない
日本経済のパイを増やしていくために必要な、自然資源の活用について、最後に3点お話しします。第1に林業です。日本の国土の7割は、森林で覆われています。世界全体で見れば、陸地が3割で、そのうちの3割しか森林に覆われていません。つまり、日本は異常に森林が多いのです。ところが、それがほとんど活用されていません。
戦争中、軍事目的で森林のほとんどが伐採されました。戦後、日本人はその裸の山に一生懸命植林をしてきたのです。天皇陛下が率先され、実際、見事に植林が実現しました。しかし、現在、植林した木材は全く使われていません。日本経済が高度成長を始めると、円高になり、外国の材木を買った方がはるかに安くなったからです。インドネシアから速成されたバルサ材を買ったり、カナダから杉を買ったりしているわけです。
杉は30年サイクルです。30年以上放置しておくと、荒れてきます。ヒノキはもう少し時間がかかりますが、いずれにせよ、荒れる前に間伐して整備しなければなりません。ところが、林業そのものが廃れています。若い人が林業に従事しないのは、給料が非常に低いからです。枝落としをする人がおらず、枝が育ってきて日光が当たらなくなります。そうなれば、山は何年も床屋に行かなかったような頭になってしまいます。
●バイオマス発電で光明が差す
しかし、これほど多くの森林資源を有している国は、世界でも本当にまれです。東京大学第28代総長の小宮山宏氏が力説しているように、日本の森林の8パーセントを使うだけで、今の日本の木材需要を全て満たすことができます。ところが人材不足のため、活用されていないのです。
ただし、最近一筋の光明も見えてきました。バイオマス発電です。菅直人政権時代に、バイオマスで発電した電力の買い取り制度ができました。収入が期待できるため、各地の山の中腹に、発電工場が建設されつつあります。それに伴って、林道も整備されるでしょう。バイオマス発電には、間伐材が使われており、立派な木は残っています。残った立派な木は、林道を通じて下ろしてきて、製材すればいいのです。ドイツや北欧の高性能の製材機械を使えば、売ることができるでしょう。所得が上昇し、好循環が生まれます。これはアベノミクスに書かれていないことですので、大いに力説しておきます。