高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の医療関係者は「医療」に注力できない
高齢化と財政危機~その解決策とは(14)日本の医療が抱える問題点
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、社会保障のうち、医療が抱える問題点について解説する。日本の国民皆保険・皆医療は、諸国に誇るべき優れた理念を掲げているが、問題も多い。例えば、アメリカのようにパラメディカルが整備されておらず、入院日数は長期化し、ベッド当たりの医療人員不足も極めて深刻だ。(全24話中第14話)
時間:8分19秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年12月3日
≪全文≫

●医療費と介護費の合計が年金よりも多くなった


 年金に加えて、社会保障のテーマには医療と介護があります。医療・介護は、高齢化の進展に伴って急速に給付費が増大しており、大変重要です。

 グラフを見てください。社会保障全体が、急速に増えていることが分かります。緑の部分が年金です。もちろん年金も増えていますが、一番伸びが激しいのが、医療です。高齢化が進むにつれて、医療費は波を描くようにして増えていっています。そして、最近になって伸びが著しいのが、介護です。最近では、ついに医療と介護を足した分が年金よりも多くなってしまいました。


●医療・介護は雇用を生む


 医療・介護費は、これだけ伸びも比重も大きくなっていますから、やはり適切にコントロールする必要があるでしょう。ただし、お金だけが問題なのではありません。年金はお金だけですから、ある意味で数字の計算で済みますが、医療と介護は現業サービスです。国民一人一人の健康と生活に直結しているため、別の配慮が必要です。受給者の生活ニーズを踏まえて、生活の質を落とさないように、適切な改革が求められます。また、医療・介護はサービスを提供する活動ですから、雇用を生みます。産業としても非常に大きな比重があり、経済活動にもそれなりに貢献しています。

 2006年から2016年までの間に、日本では就業者数が6,389万人から6,465万人に増えました。10年間で76万人の増加です。製造業では、同じ期間に1,163万人から1,045万人と、118万人も減っているのに対して、医療・福祉は571万人から811万人と、240万人も増えています。雇用機会も増えているし、産業活動もGDPもその恩恵を受けています。したがって、医療費・介護費は、ただ減らせばいいというわけではありません。


●日本の医療関係者は、医療に注力できない


 日本では1961年に、国民皆保険・皆医療が整備されました。当時、日本は発展途上の中進国です。所得も低く、経済力も不十分でしたが、国民全員に統合された保険制度をつくり、平等に医療サービスを提供することにしたのです。これは世界でも傑出しています。これほど早く医療制度を整備した国は、数えるほどしかありません。今でもそうですが、日本では健康保険証が一枚あれば、全国どこへ行っても同じ医療サービスを受けることができます。こうした体制は、世界でも本当にユニークです。これは大い...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑