高齢化と財政危機~その解決策とは
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国の借金が国民の金融資産を上回ったらどうなるのか?
高齢化と財政危機~その解決策とは(3)家計の貯蓄率と一般政府総債務
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏によれば、2020年以降、一般政府総債務が国民の純貯蓄総額を上回る可能性がある。そうなれば、新規国債発行を国内で賄う原資が不足してしまうだろう。日本の国債返済能力に市場が疑念を持てば、異次元金融緩和によって形成された現在の日銀相場も、実勢に引き戻されるかもしれない。(全24話中第3話)
時間:7分15秒
収録日:2017年9月27日
追加日:2017年10月21日
≪全文≫

●一般政府総債務が家計の金融純資産を上回るかもしれない


 もう1つ気になる現象が見えてきています。それは、一般政府の債務残高総額がますます増えていって、遠からず、国民の純貯蓄総額(金融資産)を超えそうだという現象です。

 次のグラフを見て下さい。これは、家計の純貯蓄と政府の総債務を比べたものです。一方はネットで、他方はグロスです。家計の中には、家のローンや保険、借金も含まれています。こうした借金分は公債を買う原資には当てられません。ですから、政府の債務と比較する際には、純貯蓄でなければいけません。他方、政府の債務はグロスで測っています。確かに、政府は資産を持っています。しかし、そこには道路や橋といった、売却できないものが含まれています。また、金融資産にしても、社会保障基金のように売ることのできないものが多くあります。そこで、政府の借金としては、ハードウェアも金融資産も全部含めた総債務で測っています。

 ブルーの線が家計の純貯蓄(金融純資産)です。高齢化が進むにつれて、伸びが止まってきています。他方、オレンジ色の点線は一般政府総債務です。後に説明しますが、こちらは高齢化の進展に伴って、徐々に上がってきています。そして、2010年頃を過ぎると、加速度的に上昇してきます。そして、2020年、25年ごろには、一般政府総債務が家計の金融純資産を上回っていくと予想されています。

 そうなると、政府が新たに国債を発行しても、それを買う原資がなくなってしまうのです。金融機関が国債を買うわけですが、その原資はもともと国民の貯蓄です。金融機関がそれを購買に使っているだけです。したがって、国民の純貯蓄が政府総債務を下回れば、新たに国債を買うゆとりがなくなるということになります。こうした事態が、あと10年から15年の間に訪れるでしょう。これは非常に恐ろしいことです。


●高齢化がディスセービングを招く


 高齢化が進めば、家計の貯蓄率が下がるということは、このグラフを見ればすぐ分かります。1997年頃までは、日本の貯蓄率は10パーセントを超えていました。しかし今や、ずっと落ちてきて、0になったり割り込んだりしています。高齢化が、ディスセービング(貯蓄掘り崩し)を招くからです。働けるときには、どんどん稼いで貯蓄しますが、年を取って働けなくなると、預金を下ろして使わざるを得ません。貯蓄率はマイナ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ