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ヘルスケアの視点でみるアジア事情とアウトバウンド

医療とビジネスの健全な関係(5)アウトバウンドを推進

真野俊樹
中央大学大学院戦略経営研究科 教授/多摩大学大学院 特任教授/医師
情報・テキスト
ヘルスケアビジネスの一つのアプローチとして海外展開、特にアジアがこれからのポイントだと、真野俊樹氏は言う。実際に各省庁によるヘルスケアのアウトバウンドが計画、実行されており、相手国のヘルスケア事情の改善、発展に寄与しているのだ。(全6話中第5話)
≪全文≫

●これからのターゲットはアジア


 ヘルスケアを一つのビジネスとして考えなければいけないのは、海外への進出ということになります。これは、別にヘルスケアの世界に限ったことではなく、マーケットが大きいところを狙うといった意味では、一般のビジネスの世界でも高齢者、あるいはアジアを含めた海外へという流れは当然あると思います。

 ヘルスケアの場合、高齢者はもともと主たるターゲットなので、それはあまり考える必要はなく、むしろ海外展開だという話が出てきています。その中でもアジアは身近ですし、成長力もあるので大きな市場になるということで、ここを考えようということになるわけです。


●ヘルスケアの視点でみるアジア事情


 上のスライドを見ていただくと分かるように、アジアの成長率は結構高く、特に中国など近年はやや落ちてきましたが、GDPの成長率は非常に高いものがあります。少なくとも先進国であるG7などより高いということが大前提としてあります。

 これを中長期、あるいは1000年くらいの単位でみると、アジアはもともと豊かなエリアでたまたまここ100年から200年くらいの間下がっただけで、今後また伸びてくるのではないかと見られています。それは日本も含めてですが、こういったところに日本がうまく絡めないかという見方もあります。

 また、アジアでは可処分所得が特に中間層においてどんどん増えてきています。こういう時代において、日本あるいは日本のヘルスケアがこの中間層にうまくアピールして伸びていけるのではないかと思われます。よく言われるのは、一人当たりのGDPが1万ドルを超えると、ヘルスケアに対する関心が上がるということです。

 一方、アジアの高齢化はどんどん進んでいます。日本がその最先端ではありますが、韓国、シンガポール、香港、いわゆるアジアの中の先進国では、日本に似たようなペースで進んでいるのです。また、インドネシアやマレーシア、インドあたりになると、大分先とはいえ、一応高齢化が予想されます。中国の場合、今は二人っ子と言っていますが、ずっと一人っ子政策をやっていたので、やはり高齢化は進むだろうと言われています。

 ですから、こういった国々に日本が課題先進国として解決策を提示し、解決していくことによって、そこで得られたノウハウ、ビジネスモデルと言ってもいいかもしれませんが、それをアジアに移していこうという意見も出ているといった状況です。

 また認知症は、日本でも増えていますが、アジアでも急速に増えています。


●ヘルスケアビジネスのアウトバウンドを推進


 そうした中で、経済産業省が「ヘルスケアのアウトバウンド」ということを言い出したのです。ただ、他のビジネスとは少し違い、やはり日本だけがいいとこ取り、おいしいところ取りをするだけだと、人道的な問題があるのではないかということがあります。極端なことをいえば、食べ物などもそういったところがあると思います。いくら海外の食べ物が良いからといって、地元の食を無視してそこに侵食しまっていいのかといった話もあるでしょう。

 そういう意味で、相手側の発展に寄与するようなヘルスケアの形が望ましいということです。つまり、日本が病院を新興国につくるといった場合、そこでは最先端のことをするのですが、そのノウハウは地元の病院に広げていきたいということです。あるいは、日本の皆保険制度は英語で「Universal Health Coverage」と言いますが、非常に良い制度なので、こういったものをもっと幅広く広げていきたいのです。

 実は、スライドにも出ているノウハウで「ミレニアム開発目標」というものがあります。WHOなども提示している考え方ですが、こういった人道的な部分も忘れてはいけないというのが、ヘルスケアビジネスの一つの特徴です。そして今、図の右にもあるように全省庁が絡んで、ヘルスケアビジネスのアウトバウンドをやっていこうと動きになっています。


●優れた医療技術を輸出して拠点化・事業化


 また、多くのところで拠点化、事業化が始まっています。もちろん、海外に展開するというのはそれほど簡単な話ではありません。スライドは経済産業省のものですが、赤のところが実際に展開しつつあるところです。中国のリハビリテーションセンター・検診病院、ロシア・ウラジオストクの画像診断センター(ここでは最近、リハビリテーションセンターもつくりました)など、結構あります。また、カ...
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