●ビジネススクールでヘルスケアを学ぶわけ
前回、アジアがヘルスケアビジネスの一つのターゲットになるのではないかという話をしました。それ以前にも高齢化が進むに当たって、地域包括ケアというコンセプトが出ました。しかし、課題はいかに持続可能性を担保していくかということであり、そこでお金のことも含めてビジネスモデルを考えなければいけないという話をしてきました。
そのようなことで、私としては、今すぐにこれをやると良いという解決策は提案しにくいのですが、ビジネススクールでヘルスケアというものを考えて、新しいビジネスモデルをどんどんつくっていこう、そしてそれを世の中に発信していったり、場合によっては起業していく、というようなことができるのではないか、と実は思っているわけです。それが、「ビジネススクールでヘルスケアを学ぶわけ」ということになるのです。
●ヘルスケア産業で「稼ぐ」ことの重要性
もっというと、当然「ヘルスケア産業の中でいかに稼ぐか」という話になります。ヘルスケアの世界は、もともとあまり「稼ぐ」という表現は好きではない人が多いのですが、国の予算、つまり税金や保険料の中だけで、どこまでそれが維持できるかというのは、もう時間の問題だと思います。消費税などを例えば25パーセントとかにすれば別ですが、全て国の予算でできない時期が来るということです。そのような状況ですから、稼ぐことの重要性を改めて考えた方が良いと思います。その意味で私の最新の著書は『医療で「稼ぐ」のは悪いことなのだろうか? 医療立国の可能性、その課題と展望』(薬事日報社)です。
ストレートにいうと、例えば、日本の病院に海外のお客さんが多く、そこが自由診療で結構なお金を獲得していたとします。そうして、最先端の医療機器を買いました。つまり、外国人の患者さんから稼いだお金で、最先端の医療機器を買った、ということです。では、そこに日本人が患者として行ったとき、その医療機器を使ってもらえないのかといえば、それは使ってもらえるわけです。
ですから、日本のお金だけではなく、外国人のお金だけれどもそれが結果的に日本に還流してくるといったこともあり得ます。あるいは、そういうこともしないと、逆に診療報酬の中だけでは最先端の医療機器が買えなくなるような時代も来るかもしれないということです。そういう意味で、「稼ぐ」という、少々どぎつい表現をしているのです。
●資金調達面から株式市場との関連を考える
もう一つは、株式市場との関連だと思います。今言ったように、外国人から稼いで新しい機器を買うということももちろんあるのですが、もう一つ、株式による資金調達は非常に強力ですから、そこを生かすこともポイントとなります。日本は低金利ですので、あえて株式市場あるいは債券市場などに出さなくても良いかもしれませんが、いずれ金利が上がる可能性もありますし、そういったときにこのような考え方も重要になってきます。
ただ、こういう話をすると当然、日本では株式会社の病院は認められていないという話が出てきます。ただ、実際は医療法人において、株式会社が資本を出して持ち分を持っているといったケースも、すでにあちらこちらで見られているのです。これは法律違反でもなんでもありません。もちろん、運営は医者がしますし、医療の心は忘れていません。けれども、資本のところは株式会社がやるといったことも始まっているわけです。資金調達力はそちらの方が断然大きいからです。
例えば、病院でそれなりに規模があるところでも、一つの病院の売り上げでいえば400億円くらいです。東大病院でもそのくらいのものです。ところが、株式会社であれば、1000億、一兆円の規模のところも当然あるわけで、利益率も違います。病院だと、いいところで数パーセントの利益で、悪いところは当然赤字です。このような状況もあるので、やはりお金を稼ぐというか、調達するという点では、株式市場とどのように関連させていくかということも考えなければいけないと思います。
また、百歩譲って、日本国内でそういう事実がなかったとしても、それをアジアで展開する際、お金をどう稼ぐか、調達するかとなったとき、日本の銀行からお金を借りてアジアに進出するというのは現実的に不可能なので、資金調達という面で株式にする必要性も出てくるでしょう。
そのようなことで、ここにもビジネススクールの出番もあるのではないかと思います。
●「一人当たりの医療費は高くない」をどう捉えるか
再度、確認となりますが、今お話ししたことは、別に弱者からお金をむしりとろうということでは全くありません。
もっというと、これも第3話でお見せしたグラフですが、一人当た...