日本財政を巡る課題
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政府が守るべき医療は「高リスク医療」
日本財政を巡る課題(6)医療改革・財政的リスク保護
政治と経済
小黒一正(法政大学経済学部教授)
今後急増が予想される医療費。厚生労働省の「保険医療2035提言」のメンバーとして、法政大学経済学部教授の小黒一正氏は、官民の役割分担の徹底化を主張する。財政的リスク保護の観点から、低リスク医療を公的保険の収載から外し、高リスク医療こそを守るべきだ。診療報酬の点数の見直しから医療データまで、改革案を語る。(2017年10月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「日本財政を巡る課題」より、全8話中第6話)
時間:9分13秒
収録日:2017年10月30日
追加日:2018年5月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●医療・介護は官民の役割分担を改革する余地がある


 年金や医療、介護、成長戦略まで全部ひっくるめると、時間がなくなってしまいますので、さらにいくつか興味深い点だけ、かいつまんでお話します。まずは医療です。社会保障の中では、医療と介護が今後大きく膨らんでいくでしょう。しかし、官民の役割分担を考えれば、この部分を改革する余地は大いにあります。まずその前提条件として、医療費の構造を見てみましょう。

 国民医療費の全体は大体42兆円になります。一番右側の年齢構成別グラフで見れば、65歳以上の高齢者がほぼ60パーセントを占めています。これは周知の事実です。さらに、その左側の診療種類別の国民医療費のグラフを見ると、薬関係が8兆円程度の支出です。これは平成27年度の資料なので、今はもっと膨らんでいるでしょう。診療報酬としては、開業医と専門病院を合わせて大体30兆円です。そのうち入院が15兆円で、入院外がおよそ15兆円です。こうした構造になっています。


●本当に救わなければならないのは高リスクの医療だ


 これを踏まえて、政府として何を守るべきか考える必要があります。厚生労働省が「保険医療2035提言」というものを出しました。塩崎恭久大臣のときに発表されたもので、今は加藤勝信氏が大臣を務めています。加藤大臣もそうでしょうが、塩崎大臣は相当に問題意識を持たれていて、かなり細かい社会保障改革を提案していました。

 2025年は、団塊の世代が全員後期高齢者になる年で、これは非常に大変な事態です。そこで、その先を見据えた医療の哲学を作る必要があり、こうした提言書が作られたのです。実は私もこのメンバーの中に入っていて、その際、強力に主張してこのスライドの文章を入れてもらいました。つまり、政府として医療保険の中で一番守るべきは、財政的リスク保護という概念なのです。

 例えばアメリカでは、基本的に全て自由診療で、公的にカバーしている保険はあまりありません。そうすると、メディカルツーリズムのようなことが起きてしまうのです。アメリカで手術をすれば日本円で3,000万円かかるけれども、タイに行けば200万円でできるというものですね。つまり、最悪の場合、医療処置を受けるだけで家計が破綻してしまいかねないのです。したがって、低リスクの医療と高リスクの医療があれば、本当に救わなければならないのは高リスクの医療です。優...

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