日本財政を巡る課題
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日本財政を巡る課題(1)日本財政の現状
政治と経済
小黒一正(法政大学経済学部教授)
日本財政を巡る課題について、法政大学経済学部教授の小黒一正氏が解説するシリーズ1回目。今回は議論の前提として、日本財政の現状を確認する。金利の抑制によって利払い費が増加せず、何とか日本財政は回っているが、社会保障費と国債費は拡大の一途を辿っている。(2017年10月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「日本財政を巡る課題」より、全8話中第1話)
時間:9分33秒
収録日:2017年10月30日
追加日:2018年5月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●2017年現在、1945年の債務残高GDP比を超えている


 法政大学経済学部教授の小黒一正です。まずは、よくご存じの方もいるかもしれませんが、あらためて財政の姿について振り返りたいと思います。

 資料は、平成29年度の国の一般会計の歳出・歳入の構成になります。補正予算はまだ組まれていませんが、全体が100兆円になっています。左側にある歳出を見れば、社会保障が大体32兆円、国債費が大体23兆円、地方交付税は国から地方に渡す仕送りのようなものですが、それが15兆円です。これら国債費と社会保障費と地方交付税で全体の4分の3を占めています。残りの4分の1の予算で、昨今の北朝鮮問題や、安倍晋三総理が力を入れようとしている教育関係が支出されるという状況です。最大の支出項目は、すでにご承知の通り、社会保障関係費の32兆円になります。

 次の資料は財務省作成の資料で、平成2年度と平成29年度の予算の歳入と歳出の変化を見たものです。一目瞭然ですが、歳出で大きく膨らんでいるのは2つ、社会保障と国債です。歳出がこのように膨らんでいる一方で、税収はあまり変わっていません。したがって、その差を埋めるために赤字がどんどん膨らんでいます。

 これを示したグラフをご覧ください。グラフの赤いラインが一般歳出、青いラインが税収を示していますが、歳出と税収の差を国債の発行によって穴埋めしている状況です。

 さらに、「政府債務残高の名目GDP等に対する比率の推移」というグラフがあります。1945年に債務残高GDP比はおよそ200パーセントを超えました。敗戦のために戦時債務は事実上放棄されましたが、戦後のインフレや預金封鎖、財産税といったさまざまな手段が駆使されました。2017年現在、こうした1945年の債務残高GDP比をすでに超えて、さらに債務が膨らんでいます。これが現在の財政の姿です。


●利払い費がじわじわと増えている


 こうした状況下でも、財政が何事もなくうまく回っている最大の原因は、一言でいえば、金利が低下し、利払い費が抑制されているからです。現在、長期金利は0パーセント程度になっていて、そのために利払い費が増えないのです。

 昭和50年度から平成29年度までの公債残高の推移を見れば、公債残高が急激に増えているのが分かります。他方利払い費は、昭和61年ぐらいから平成10年度ぐらいまでは横ばいで推移し、その後はむしろ下がってきています。...

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