日本財政を巡る課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
所得連動型奨学金をもっと拡充すべきだ
日本財政を巡る課題(7)所得連動型奨学金の拡充
小黒一正(法政大学経済学部教授)
現政権と公明党は、租税を財源とする給付型奨学金を拡充していく方針である。しかし大卒の生涯賃金は、高卒と比べて7,000万円も増加する。受益と負担の一致を考えるなら、財政投融資を用いた奨学金、しかも返済を容易にする仕組みを備えた所得連動型奨学金を拡充すべきだと、法政大学経済学部教授の小黒一正氏は主張する。(2017年10月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「日本財政を巡る課題」より、全8話中第7話)
時間:8分23秒
収録日:2017年10月30日
追加日:2018年5月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●給付型奨学金は大学に行かない人も負担する


 最近話題になっている奨学金についてお話します。前提として、大学に進学した場合、高卒と比べると生涯賃金が平均して7,000万円も増えます。

 どちらかといえば公明党の政策でもありますが、現政府は給付型の奨学金を増やす方向で議論を進めています。財源は租税です。つまり、受益と負担の関係を考えると、基本的には大学に行っていない人も租税を負担することになります。ですから、そうした形で支援するのが本当に望ましいのかどうか、よく考える必要があります。


●普通の奨学金は、非常に厳しい状況に置かれつつある


 普通の国債を発行した場合には、償還財源は租税です。しかし「財投の仕組み」という図を見ていただくと分かる通り、奨学金の場合、財投を使ってお金を流していく仕組みが機能しています。金融市場からお金を調達するために、見かけ上同じ国債ですが、財投債を発行して、お金の必要な財投機関に割り当てるという流れです。

 図の財投機関のところに、学生支援機構というものがありますが、これは奨学金などを担当している機構です。奨学金といっても、ただであげてしまうのではなく、有償のものです。つまり、学生にお金を貸して、卒業後に返してもらうという制度です。この枠組みを拡充する方向性が一つ考えられます。

 しかし普通の奨学金は、非常に厳しい状況に置かれつつあります。大学を卒業したけれども、3年ぐらいで入社した企業の収益が悪化し、賃金が上がらなくなったとか、場合によってはリストラされたといったケースが出てきているのです。結局のところ、普通の奨学金は住宅ローンと同じですから、借りた金額の元本と金利を返していかなければなりません。その際、収入が変化すると、低額であっても借りた奨学金が非常に重い負担になって、債務不履行になるという場合もあります。


●財政投融資では受益と負担が一致する


 そもそも財政投融資は、受益と負担が一致する形の投融資で、そのサービスを利用する人が負担を負うことになります。普通の一般会計で発行される国債の償還財源は、誰も特定されていません。つまり、普通の人が消費税や所得税といった形で、国債を返却しているわけです。だから、各個人で見た場合には、受益と負担が一致します。保険の場合も受益と負担が一致します。他方、生活保護が典型ですが、消費税...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
人生はエネルゲイア――AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(9)秀吉が作った公武統一政権と歴史のif
公武統一政権を作った秀吉の狙いとその歴史的意味
黒田基樹
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ