●消費税が33パーセントなければ財政は安定化しない
今回は、財政再建を進める場合に、どれくらいの消費税率を確保しなければいけないのか、その一つの目安を説明します。
このシリーズではこれまで、公債の負担や財政状況について見てきました。例えば、このスライドにも書いた通り、10年間で26兆円も社会保障費が伸びています。1年間で2.6兆円ずつ増加している計算になります。もし社会保障費を抑制しないのであれば、消費税の税率に換算して、毎年1パーセントずつ引き上げていかなければならない事態です。となると、10年間で消費税率を10パーセント、20年間で20パーセント引き上げなければならないという、類推が成り立ちます。
ただし、最終的にどれくらい消費税率を引き上げなければいけないのかということは、国内外でもう少し精緻にシミュレーションされています。2017年に直ちに社会保障費の財源を賄うように、また借金の膨張が止まるように消費税を引き上げるとすれば、税率はどの程度必要なのでしょうか。アメリカの経済学者、Anton Braun氏とDouglas H. Joines氏の推計によれば、消費税率を33パーセントまで引き上げないと、日本の財政は安定しません。あるいは、東京オリンピック後の2022年に、一度に消費税率を引き上げるとするなら、37.5パーセントにまで引き上げる必要があります。
2017年時点では消費税率は8パーセントですから、これを30パーセントまで、20パーセント強も一気に引き上げるということは、当然できません。しかし、一つの目安としてこうしたことが計算されています。
●財政再建を先送りすれば、毎年1パーセントの追加増税が必要
2017年で33パーセント、2022年で37.5パーセントが必要ということですから、5年間増税を先送りにすると、およそ4.5パーセントも余分に消費税率を引き上げなければならなくなります。その理由としては、社会保障費の急増もありますが、一番大きいのは、やはり債務が累増していくからです。つまり、1年間財政再建を先送りすれば、毎年1パーセントずつ、追加で増税しなければならないことになるのです。こうした改革の遅延コスト、英語でいうdelay costが発生してしまいます。
2パーセントのインフレが生じたケースでは、多少、引き上げなければならない税率が下がります。これはまさにアベノミクスが成功して、デフレを脱却し、機動的な2パーセ...